A Winter Book






 それから幾つかの夜が過ぎた、雪のやんだある晩。

 少年とユキノは、窓から淡く差し込む月明かりの灯の下で、いつも通りに話していました。
 夜風が窓枠を揺らす音と、二人を暖める火の音以外何も聞えない部屋の中で。


 ただ、この夜はちょっと眠さを我慢して、お互い何かを期待する空気に包まれて。



 二人ともそろそろ眠りの淵に落ちようかという頃、ようやくその期待する何かが訪ねてきました。


 ぽとん、ぽろん。

 ぽろん、ぽとん。

 硝子玉を落とすような、つりがねの形の花から露がこぼれるような、不思議な調べ。


 「……今、聞えた?」
 「……聞えた。」
 うなずきあう、少年とユキノ。


 「行こう!」

 二人は眠気も忘れて、小屋の外に飛び出していきました。










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