ポストカードサイズのノートに書かれていたおはなしは、ごくささやかなものだった。
ちょうど、ミルクティ一杯分で、読み終わってしまうくらい。

私は、ミルクティの最後の一口を飲み干して、ノートブックをそっと寝ているオーナーの傍に返した。
相変わらずオーナーは気楽そうな寝息を立てて、カウンターにつっぷしている。
さすがに、このオーナーに付き合う店主に、少し同情を感じないでもない。

「ごちそうさま、店主。ぐうたらなオーナーにも、よろしく。」
熱いミルクティにほんのりと身体が温まったところで、私はカウンターを立った。

「おやすみなさい、よい冬至祭の夜を。そして、よいお年を……。」
店主は、また少し奇妙なことを言って、静かに微笑む。
「まだ、冬至には早……。」
「今夜は、もう冬至祭の夜ですよ。」
店主は、私の言葉を遮って、ほんの微かに悪戯っぽく目を細めて、断言する
そう言いきられると、確かに冬至祭の賑わいの中を雪森まで散歩して来たような気に、なってくる。

「まあ、いいか。」
ちょっと狐につままれたような、奇妙な気分で、私は店の扉を開けた。
だが、あまり細かな妙なことに気を留めているようでは、到底この店には付き合えない。
何時の間にか、雪森から見慣れた街角に戻った時には、もう気にもならなくなっていた。

実際、戻った街角の店は冬至祭の飾りで華やかな色彩にあふれ、舗道を歩く人々も何処か楽しそうに見える。
やっぱり、店主の言ったように、今宵は冬至祭の夜。まあ、そんなものだ。
そんな気楽な気分でふと空を見上げると、雪森から私の後をついてきたのか、ちらほらと真白い粒子が降りてきた。

くるくる、くるくる、舞い降りる雪の結晶は、妙に鮮明に私の瞳に映って。
何だか、あのノートブックのおはなしの、白い花のように、見えた。

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ささやかなクリスマス企画に、ご注文を下さった方、ありがとうございました〜。

そして、大懺悔。
ロイヤルミルクティのおはなしの方が、間に合いませんでした……。き、企画倒れ……(涙)
ロイヤルミルクティを注文された方、本当にごめんなさい。
冬休み中にリベンジできたら、今度は年賀のご挨拶代わりにお届します……。

それでは、よいクリスマスを、そしてよいお年を……。


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