2005年12月分



12/27
日本のマスコミは綺麗なマスコミ?

現在イラクで活動している陸自の行動について、我々は防衛庁並びに陸自のHPまたはマスコミの報道でしか知ることが出来ません。
そして「自衛隊のHPは都合のいいことしか書いてない」ということでマスコミを情報源とする人も当然います。
しかし、それは本当に「現地の真実」なのでしょうか。

彼らがイラクで何をやってたか (とりかご 島根県のお歳暮販促中!)

>「一月に自衛隊がサマーワに入ると、日本の一部マスコミは
>自衛隊駐留反対のデモをサマーワ住民が起こすようけしかけ
>たが成功しなかった。一説によると貧乏人を集めて金を渡し
>デモをさせようともしたらしい。しかし、サマーワ住民の自
>衛隊に対する期待が大きく成功しなかった。それであきらめ
>てそのマスコミ人はサマーワから退散したのだ」

こういう説も出て「お前達はいったいどこの国の新聞だっ!」と、いわれそうなほどに自衛隊に関しては「現地で全然役に立ってない所か嫌われている」という意識を国内に植え付けるのにご執心の模様。
多くの大手マスコミは基本的に反自衛隊的なスタンスを持っています。百歩譲ってそのようなスタンスをもつのもまたありとしても……
自分に都合の悪いソースは無かったことにして自分の主張のためなら捏造(拡大解釈含む)も辞さないというのはダブルスタンダードもいいところ。
よく彼らのいう「報道の自由」は本来なら「真実のためなら多少の無茶も許される」という意味合い(これも問題だが)でしょうが、日本の場合はすでに「自分たちの主張のためなら真実が異なってもかまわない」という事になっている模様です。
そして、日本の国益よりも他国の国益を優先するのも大手新聞の特徴でそのような相手からの「大本営発表」を行うのも相変わらずかわっていないようです。
ひょっとして、よく言われる「軍靴の音が聞こえる」というのはマスコミの社屋内で響く音なのではないでしょうか。


そして、これも「捏造だっ!」という人には聞いてみたいものです。

あなたが信じて情報ソースにしているマスコミ情報。それは本当に真実のみを示していると信じていますか?


12/
工学実験機「はやぶさ」
まず、はじめに定義しておきたいのがこの探査機の性質。
小惑星探査機と言われていますけど、それは「PLANET」を正式名称に冠する宇宙機シリーズであり、本機は「MUSES-C」(Mu Space Engineering Spacecraft - C)(ミュー型ロケット打ち上げによる工学実験宇宙機の3番目)であります。
ちょいと私はあるジンクスがあってこの手の話を書いてなかったんですけど、今の現状に我慢できずに書いちゃいました。
報道(比較的少なめだったけど)で知っている人も多いかと思いますが、本機は世界でも初の「小惑星に着陸して直接のサンプルリターンを行う」というあまりにも野心的なものですが、

本ミッションの本来の目的であるのは搭載されたイオンエンジン。2万時間を超える長時間の運転を行い、推力こそ小さいながらも軌道変換能力では化学ロケットをしのぐ高性能を立証しました。
(それにしても、こんな長時間の運転を行えるエンジンはSFの世界だけだと思ってた(笑))

そして、その運用も極めてクリティカルな状況が続くという運用担当者泣かせです。
「イトカワ」に向かう途中で3軸分ある姿勢制御用リアクションホイール(RW)の二つが作動不能に陥り、スラスターを使用しての姿勢制御を余儀なくされ、結果的に精度の高いRWが使えずに多少精度の荒いスラスターでタッチダウンすることに。
第1回は自律判断でイトカワに「着地」することになり、30分ほど表面であぶられる羽目に。
第2回は前回のターゲットマーカー(88万人の署名入り)を再利用するという高精度の誘導を示し、1秒だけタッチダウンしてサンプル採取、すぐに上昇に成功。
しかし、離床後にスラスターの異常作動が発生して姿勢が乱れるわ通信が途絶しかけるわとトラブルが続発し、その後の調査で機体内でのスラスターの燃料リークによる温度の異常低下、それにともなうバッテリーの異常深放電、記録データの一部消失などが発生し、いわゆる瀕死の状態に陥っています。
スラスターの燃料が漏れたと言うことは、もしかするとRWに代わって姿勢制御を行ってきたスラスターさえ使用不能になりかねません。
次第にアンテナが地球を、太陽電池パドルが太陽を外れて死を待つだけになった「はやぶさ」。そこに「こんな手法もあるんですが〜」と、イオンエンジンでもちいるキセノンガスを噴射するという裏技を持ってきてどうにか一命をとりとめます。
しかし正規の姿勢制御手段をほぼ失い、しかも異常な外乱要因により姿勢乱され通信すら途絶している状態のまさに満身創痍なはやぶさ。
それでもなお希望を失わず帰還する努力を続ける運用者には頭が下がる思いです。

これから先、通信が復帰する可能性は6割はあると言われていますが、裏を返せば通信途絶の可能性は4割で五分五分よりわずかにましという程度。
しかし、このまま本機が失われることになっても、すでにはやぶさは大きなものを残したと思います。
同じく瀕死の重傷となりながらも運用の不屈の闘志で火星軌道まで達して28万人もの名前を届け、そして次に続く宇宙機に大きな遺産を残した火星探査機「のぞみ」
「はやぶさ」も同じ運命になる可能性が大きいわけですが、すでに膨大な科学観測ミッションを行い、小惑星に関する新たな知見を与えたと信じています。
 工学実験的にもイオンエンジンの長時間運転、探査機の自律運用による小惑星ランデブー並びにタッチダウン、緊急時における数々の対処法など有形無形のノウハウを日本にもたらしました(ついでに、結果的ながら光輻射圧による推進実験にも成功しています)
報道も、ただ失敗を報道するだけでなく、そして「写真がないから」とか「どうせ誰も興味持たない」とかではなく日本の宇宙探査機が行うミッション。それを正直に(できれば生で)報道してほしかったものです。
昔のハレー彗星接近時のハレー彗星探査機艦隊の際は特番を組んで生でリポートしていたのが非常に懐かしいです。(メインはヨーロッパ宇宙機関の探査機ジオットによる中心核への500キロまで接近という突撃撮影)
(ちなみに、NHKははやぶさに関する事よりも韓国にかんするニュースをメインに扱ってました)
しかし、そんな少ない報道でも、それがきっかけとなって興味をもったりした人もやはりいましたし、ネットでは現地にいるジャーナリストのブログが(本家よりも)詳しくリポートしてくれてあるていど詳細な情報をセミリアルタイムで得ることができていました。

なによりも、失敗を恐れて前に進むことが難しかった日本の宇宙開発において他国にない独創的な宇宙機を(結果的に軽量・低予算で)作り上げ、それを運用したという事は大きなアドバンテージとなりうる事でしょう。
取材陣も失敗を失敗と考えずリカバリーの可能性を考慮したインタビューを行っていたのも大きな収穫でしょう(もっとも、各社の論説委員の方が熱意がないと的川教授からつっこまれている始末(笑))

これからも今回の教訓を生かした「はやぶさ2」などの野心的なプロジェクトを目指してもらいたいものです。そしてその結果を国内に公表して科学に興味を持つ人々を増やして欲しいのもまたあります。
望むらくは、次期MUSESやPLANETシリーズに関する決定権や発言力のある箇所にいる人々がまともな科学知識をもってくれることを。

とある掲示板にあった昔の詩人の言葉を持って今回の締めとさせていただきます。
「人間は、自分の手が届くさらにその先に手を伸ばすものなんだ。でなきゃ、天はなんのためにある?」


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なお、火星探査機「のぞみ」の運用については
「恐るべき旅路--火星探査機「のぞみ」のたどった12年」
が非常に参考になります。

参考
歴代のMUSESシリーズ
MUSES-A 月を用いた(そして、その途中で孫衛星を月周回軌道に投入した)スイングバイ技術の習得に貢献した「ひてん」
MUSES-B 宇宙空間において8mもの大型高精度パラボラアンテナを展開し、スペースVLBIを成立させて電波天文学に大きな貢献をはたした「はるか」

参考リンク
はやぶさリンク


戻ります。