ふと、マルチの動力源が気になった。
普通のメイドロボットは、たしかバッテリーとかで
動いていたはずだ。
だれど、限りなく人間に近いっていうんなら、やっ
ぱり御飯を食べるのかもしれない。
その辺のことを訊いてみた。
「なあ、マルチ」
「はい?」
「マルチって、何で動いてるんだ?」
「動力源ですか?」
「そうそう」
「電気です」
と、マルチは答えた。
うーん、やっぱ普通か。
そりゃそうだよな。
機械がご飯で動くわけねーもんな。
「電気ってことは、バッテリーとか付いてんの?」
「はい。たしか、リチウムイオン・バッテリー…とか
いうものがついてるらしいです」
「…リチウム?」
「はい。携帯電話とかに使われてる電池らしいです」
「それをときどき交換してんのか?」
「いえっ、充電するんです。人間のみなさんがご飯を
食べる程度の回数で」
「ふうん。じゃ、もし充電が遅れたりしたら、マルチ
は止まっちまうのか?」
「しばらくは平気です。…えっと、たしか、補助的に
燃料電池というのがあって、ある程度は、自分ひとり
で発電できるらしいんです」
「燃料電池ぃ?」
またまたよく解らない言葉が飛び出した。
「わたし自身もよく解らないんですけど、…たしか、
水素…だっけ? と、酸素だっけ? を反応させて、
電気を作る…らしいです」
「水素と酸素で電気?」
「…ええっと、たしか、『水の電気分解』とかいうの
があってですね――」
「ああ、それなら中学のときに習ったぞ。…たしか、
水に電気を流すと、水素と酸素に分かれるんだ」
「あっ、そうです、それですっ。燃料電池は、その逆
なんです。…水素を酸素を反応させると、電気と水が
できるんです」
「…ふ〜ん、じゃあ、マルチの中には、水素と酸素も
入ってんのか?」
「いえ、酸素はまわりにいっぱいありますから、水素
だけです」
「それが燃料電池の燃料なわけか」
「バッテリーが切れたときとか、激しい運動をすると
きは、そうやって補助的に発電するらしいです」
いちいち語尾に『らしいです』をつけるのは、本当
にマルチ自身も、よく解らないからなんだろう。
「なあ、ところで、さっきの説明だと、電気と一緒に
水ができるんだろ? その水はどうすんだ?」
「あっ、水ですか? 汗とか、あとは…」
「あとは?」
「…あとは、おトイレとかで…」
「あっ、そ、そう」
なんか、変なとこまで人間なんだな。
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