マルチって、ホントにスムーズに人間と会話する。
きっと、使われてるコンピュータも、とんでもなく
高性能なものなんだろう。
「マルチに使われてるコンピュータってさ、やっぱ、
すごいヤツなんだろ?」
オレは訊ねた。
「PNNC−205J…というらしいです」
「それって、コンピュータの名前か?」
「はい。ええっと、たしか…『超並列処理演算神経網
コンピュータ』とかいって…」
マルチはぎこちなく言った。
「…な、なんだって?」
「…よ、要はですね、小さなコンピュータがたくさん
つながって、協力し合ってるコンピュータなんです」
「なるほどな」
そこでようやく、このオレにも理解できるレベルに
なった。
マルチ自身もよく解ってないらしく、合ってるのか
間違ってるのか、曖昧に説明する。
「えっとですね、なんでもたくさんのコンピュータに
別れているおかげで、いろんな処理を効率よく行える
らしいんです。…あんまり実感はないですけど」
「じゃあ、やっぱりマルチは、すごいコンピュータを
搭載してるってことだな。さすが最新型! それだけ
性能がいいってことだよな」
「そのはずなんですけど、わたし、どうにもドジで…。
よく転んだりするし、不器用だし、頭だってあんまり
よくないし…。どうしてなんでしょうか…」
「ま、それだけ人間に近いってことだろ? そのぶん、
マルチは頑張ってるじゃないか」
オレは苦笑しながらフォローした。
「…わたし、いろいろと失敗ばっかりですから、努力
でカバーしようと思ってるんです。…わたしを造って
くださったスタッフの方々のためにも、たくさんの人
に好かれるメイドロボットになりたいです」
「そっか。頑張れよ」
オレは目を細めて微笑んだ。
「はいっ、がんばります! 浩之さんも、なにか御用
がありましたら、どんどん遠慮なく、わたしにお申し
付けください」
「ああ、手伝って欲しいことがあったら、そんときゃ
よろしく頼むぜ」
「はいっ!」
マルチは明るい笑顔で言った。
…うん、マルチなら、きっと、世界中の人たちから
好かれるロボットになれる…そんな気がする。
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