「マルチの目や耳って、どうなってんだ? 最新型の
ロボットだし、やっぱり超高性能なセンサーとか内蔵
してて、1キロ先の映像が見えたりとか、学校中の音
が聴こえたりとかするのか?」
「…いえ、残念ながら、ちっともすごくないんです。
多分、浩之さんと同じぐらいです」
「オレと同じ?」

「はい。目は高感度CCDカメラとかいう立派なもの
なんですけど、ズーム機能とかはないんです。だから、
あそこの張り紙の文字も、もう読めません」
 マルチは、8メートルほど離れた張り紙を指差して
言った。
 小さい字で、オレにも読めない。
「…普通ってことか」
「はい。…耳も、多分、浩之さんと同じくらいにしか
聴こえません」
「オレの心臓の音とかは聴こえねーのか?」
「…………聴こえません」
「つまりは、どっちも人並みってことか」
「はい」

「ま、でも、そっちの方がいいんじゃねーのか?」
「…どうしてですか?」
「うーん。だって、もしマルチが、すごいセンサーと
か持ってたりしたら、なんでも見透かされてるみたい
で、やっぱ気分良くねーしな」
「…あっ、そうですよね」
「主人の秘密をなんでも知ってるメイドロボットって
のも変だしな」
「そうですね!」
 マルチはにこっと微笑んだ。


 

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