オレは、パキーンッ!と、本気でパックを打った。
 カコーンッ!
 パックは真っ直ぐ飛び、あっという間に、マルチの
ゴールに突き刺さる。
「えっ!?」
 マルチは何がなんだか解らず、そんな声を上げた。
 ラケットを構えたまま、ピクリとも動いていない。
「ほらほら、ゴール前がガラ空きだぜ!」
 オレは結構マジだった。
 手加減なしで本気で戦う…それが相手への礼儀だ。

「速くて見えませ〜んヾ
「まだまだこれからだ! よし、次はマルチの番だぞ。
ガツーンと思いきり打ってこい!」
「あ、はい、頑張ります」
 マルチはペシッとパックを打った。
 ――っていうより、押した。
 ヘロヘロ〜と、パックが滑ってくる。

「こんなんじゃゴールは譲れねーぜ!」
 パキーン!
 カコーンッ!
 ゴール!
「あうう〜っヾ
 …ペシッ。
 ヘロヘロ〜。
「そらっ、もっと気合いを入れろっ!」
 パキーン!
 カコーンッ!
 ゴール!
「あううう〜っヾ






 …結局、マルチはオレから、一度もゴールを奪えな
かった。
「なんだなんだ、やる気あんのか?」
「…すみません。どうやら、わたし、運動関係は苦手
らしいです」
「どうやらそうらしいな」
「…ううっ」


 

続き