オレは、パキンとごく普通にパックを打った。
ススー…ッとパックは滑っていき、そのままマルチ
のゴールに真っ直ぐ突き刺さった。
少し遅れて、マルチが空振りする。
「おいおい、遅すぎるぞ」
「す、すみませ〜ん、打ち返そうと思ったんですが、
タイミングが〜」
「なんだよ、結構ニブイなあ、マルチって」
「つ、次は、わたしが打つ番ですね」
「よし、来い!」
マルチはペシッとパックを打った。
――っていうより、押した。
ヘロヘロ〜と、パックが滑ってくる。
「…なんだそりゃ」
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――結局、マルチはオレから一度もゴールを奪えな
かった。
「…マルチって、ホント、ニブイよな」
「…ううっ、すみません。…どうも機敏な動きを要求
することは苦手で…」
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