厳冬の北岳


1992.2.10 池山吊尾根からの北岳バットレス

 1992年2月9日、7時30分甲府の自宅を車で出発し8時55分、夜叉神峠に到着。林道にはほとんど雪はなくノーマルタイヤでも大丈夫だ。長い夜叉神トンネルに照明はない。ヘッドランプを頼りに歩く。10時15分、鷲ノ住山入り口に到着する。これより林道から登山道に入る。梯子や針金が随所にあり、下降路は氷結しておりアイゼンが必要だ。11時15分、野呂川発電所の吊り橋を渡り野呂川林道へ。吊尾根随道は暗黒の氷の殿堂、天井には不気味なつららが下がり、アイゼン、ヘルメット?なしでは通過不可能だ。11時55分、義盛新道入口に到着、いよいよ池山吊尾根に取り付く。道は先行パーティーによってよくラッセルされている。所々でアイスバーンとなっているので、アイゼンを装着した方が効率よく登れる。30キロの荷物は肩に食い込むが、対岸の野呂川林道がぐんぐんと眼下に下ってゆくのが心地よい。14時30分、池山御池に到着。池は氷結しており真ん中を歩いて渡る。無人の池山御池小屋に泊まる。


池山吊尾根からの間の岳

 2月10日、7時00分出発、今日も快晴だ。ラッセルは膝まであるがワカンは必要ない。7時50分、2372メートル城峰ピーク到着。9時40分、ボーコン沢の頭の手前鞍部のダケカンバ林の中にテントを設営し、10時10分、サブ行動で北岳アタックに向かう。森林限界を越えると、それまで膝まであったラッセルがなくなり、アイゼンがキュッキュと雪面に締まり快い。ボーコン沢の頭を過ぎると突然北岳バットレスの全容が眼前に現れる。天候快晴、風速8メートル、写真を撮影する余裕は十分にあった。八本歯のコルへの下りは急な岩陵であるため、ラスト20メートルでザイルを出し懸垂下降する。11時50分、八本歯のコルへ到着、風が強まってきたので休息はできない。そのまま北岳山頂へ向かう。トラバース道の分岐でうずくまって行動食を摂る。雪面はクラストしておりトレースはまったくない。ときどきたまらない孤独感に襲われる。12時55分、北岳山頂到着。風は強いが360度の展望に恵まれる。暮れの合宿から今日までの山行はことごとく敗退していたので、私にとって数ヶ月振りのピークハントとなる。やはり山頂に立てるのは嬉しいものである。13時10分、山頂を後にして八本歯のコルはザイルなしで簡単に通過し、14時30分、幕営地に帰着する。その夜、下界の自宅よりアマチュア無線を通じて明日のうちに下山せよとの連絡が入る。


1992.2.10 北岳山頂の私

2月11日、6時25分幕営地を出発、暗闇の中、ヘッドランプをつけて下山する。東に見える富士山が真っ赤に燃え出した。明るくなった義盛新道を一気に駆け下る。笹薮がアイゼンにひっかっかり度々バランスを失う。野呂川林道に出てからもアイゼンを装着したまま歩く。12時10分、汗だくになって夜叉神峠に到着する。芦安村で肉うどんとビールで乾杯し、温泉につかって私のささやかなピークハントは終わった。

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