北岳バットレス 第四尾根主陵

広河原からバットレスを仰ぐ

マッチ箱の手前テラスでの休息のひととき
(岳人1992年10月号に掲載された)

 

 1992年9月13日、地の利を生かして北岳バットレス第四尾根主陵登攀、日帰り山行を実行に移した。5時30分に甲府の自宅を出発し、7時00分、広河原の駐車場に到着した。パーティーは御坂山岳会のU氏とO氏の3名だ。広河原から大樺沢沿いに登山道を登り、二股を過ぎてバットレス沢に入る。bガリーの大滝から取り付くのが最短コースなのだが、マッチ箱のコルが崩壊してからbガリーは落石が多いので、aガリーから回り込んで緩傾斜帯に取り付く。このルートはやや遠まわりになるがザイルを出す必要がなく、結果的には第四尾根への取り付きの最短コースとなるのではなかろうか。

 緩傾斜帯をトラバースして11時00分に第四尾根主陵の取り付き地点に到着する。ここでザイルを出し、ダケカンバの根をビレイポイントにして8メートルのクラックから取り付く。四尾根は取り付いてしまえばまず落石の心配はなく、岩も硬く乾いているので快適な登攀が楽しめる。クラックの中にはしっかりとしたホールドがあり、ルートはややジグザグになるが、面白いようにザイルは伸びる。2ピッチ目はリッジどおしに登る。3ピッチ目はやさしい階段状の登攀(V級)となる。欲を出して50メートルぎりぎりまでビレイポイントを伸ばそうとすると下から「ザイルいっぱーい!」の声がかかり、やむなく一段下がってビレイする。4ピッチ目の第2コルで順番待ちの時間を利用して昼食とする。今朝コンビニエンスストアで買った弁当を食べていると、他パーティーのクライマーが怪訝な顔をして見ていた。さて、5ピッチ目、いよいよ第四尾根の核心部だ。取り付きに5メートルの垂壁があり、残置ピトンを利用すればA0、右から回り込めばフリーのX級だ。私はフリーで越えようと試みたが力尽き、ビトンを利用してA0となってしまった。そのまま登ると高度感のあるリッジ登攀となり、マッチ箱の頭に到着する。

2ピッチ目、クラックを抜ける

核心部の5mの垂壁

マッチ箱からの懸垂下降

 マッチ箱からの懸垂地点は2個所ある。マッチ箱の頭手前3メートルほどにボルト3本が打たれており、そこからDガリー側へ15メートル懸垂すると、小さなスタンスに降り立つ。懸垂の支点はよく確認しなければならない。以前、懸垂したとき、3本の支点のうち1本が「ボソッ」と抜けたことがあった。さて、そこから細かいホールドのスラブを2ピッチ登ると登攀終了、15時50分であった。最後はハイマツにビレイが取れる。ここからの草付きは結構落石が多く、夕暮れの迫る中、慎重かつスピーディーに山頂へ抜ける。16時20分、北岳山頂に到着。登攀終了が山頂で迎えられるのは快感である。ここでガチャモノを全部ザックにしまい、あとは一目散に広河原を目指す。肩の小屋を経由し草スベリを駆け下り、白峰御池で日没となり、ヘッドランプをつけて広河原に19時00分に戻ることができた。

マッチ箱の頭

最終ピッチの登攀

 

山行記録のページへ

ホームページへ戻る