屋久島紀行
職場旅行は屋久島登山


屋久島・縄文杉

 我が職場では年に一度、親睦旅行に行くのが恒例行事になっている。普通はどこかの温泉旅館で1〜2泊し、お風呂に入って浴衣で宴会をするのだが、今回は例年とは少し違った趣向となった。誰が言い出したかは忘れたが、今年はみんなで山に登ろうという案が出た。それも、林業技術者であるならば一度は屋久杉を見なければいけないとかいうことで、屋久島は宮之浦岳登山ということになった。たまたま山好きの職員が多かったためか、上は68歳の退職OBから下は22歳の新採用の職員まで総勢10名の登山隊が編成された。

 平成8年11月21日、羽田空港より飛行機を鹿児島で乗り継いで、午後3時に屋久島の宿泊旅館に到着した。登山計画書は屋久島空港で提出した。近所のスーパーで明日からの食糧を調達した。ガスボンベは前のお客さんが置いていったものが旅館にあったので、それを使うことにした。

 11月22日、午前7時50分、タクシーに分乗して淀川林道終点に到着。8時45分、淀川小屋に到着。登山道は樹の根っこが露出しており、ひじょうに歩きづらい。10時30分、花之江河の湿原に着く。ここでビデオ撮影に夢中になり、出発時間が遅れる。黒味岳へは空身でピストンする。黒味岳山頂は天候も良く、360度の大パノラマだ。どこを向いても海が見えるというのは快感だ。森林限界を超えた稜線歩きを続けて、午後2時、宮之浦岳に登頂する。風が強く寒かったが、たっぷり展望を楽しんだ。屋久島の豊かな森林、これはまさしく生物資源の宝庫だと感じた。気が付くと空は高曇りに変わっていた。
 元気のいい衆は永田岳を往復し、疲れている衆は小高塚小屋へ直行した。午後4時30分、小高塚小屋に到着。すぐに食事の準備にとりかかる。米をとぐ者、野菜を切る者、水を汲みに行く者など、各人が自分の役割をよく把握している。さすが、組織力がものをいう職域パーティーだ……??

 11月23日午前7時25分、小高塚小屋を出発する。朝靄の樹林帯を歩く。気象情報では今日の天候は下り坂だ。無人の高塚小屋を過ぎると急な下り坂となる。ここからが大株歩道と呼ばれる道だ。杉の大径木が目につき始める。そして待ち焦がれていた縄文杉が眼前に現れた。樹齢2200年以上、なぜか神聖な心地になった。40年生前後のスギを相手にしている我々にとっては、とてつもなくその存在は崇高である。と思いながらも、輪切りにしてテーブルにしたら何千万円になるかなあと、不謹慎なことを考えてしまった。
 さらに下ること1時間、午前10時、ウィルソン株に到着し、ここで昼食とする。1586年に伐採された切り株が腐らずに現存することも驚異だが、当時、人間の力だけで切り倒し、搬出したことも驚異だ。午前11時10分、大株歩道入口のトロッコ軌道に出る。ここから小杉谷を経て荒川林道終点まで3時間弱、軌道上を歩くことになる。隊列はもはやばらばらだ。先頭が荒川林道終点に待たせてあるタクシーを発見したのが午後2時20分、それから最後尾が到着するまで40分待つことになった。タクシーに乗り込む頃、雨が本降りになった。
 普段は拡大人工造林のスギばかり相手にしてきたので、スギの持つ本来の生命力に気が付かなかった。今回の登山によって、スギに対しあらためて敬服の念を抱かずにはいられなかった。

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