バックナンバー・こんな事語ってました

お酒について語らせて
確かに言ってたこんな事


UPDATE.1998.1/11
2001/01/14 改訂

第1回 カクテル

ラムちゃん登場
ラ:「こんばんわ〜」

N:「いらっしゃいませ」

ラ:「カウンター、いいですか?」

N:「はい、どうぞ お好きな所をご利用ください。何にしますか?」

ラ:「うーんと、私 お酒のこと良く知らないんですよ。でもこの間テレビでこのお店のことやってたから びっくりしちゃって。自分の住んでる街じゃないですか!それに前からカクテルとか飲みたいと 思ってたんですよ。失礼ですけど、こんなところにバーがあるなんて知らなくて。バーって行ったことが 無かったんで、ドキドキしながら入ったんです」

N:「場末ですからなかなか気が付かない所ですよね(^^;)ま、こんなところです。じゃあカクテルで ・・・なんにしましょうかねぇ?お酒、好きですか?(^^)」

ラ:「はい。友達と良く飲みに行きますよ。居酒屋とか。だいたいビールとか酎ハイですけど(^^;)」

N:「じゃあ結構 イケルんですね?」

ラ:「そうですね(笑)。友達にも『ラム結構強いよねぇ』って  あ、私友達からはラムってニックネームで 呼ばれてるんですけど、言われちゃうんです。なんかお酒飲んでると楽しいじゃないですか?で、気が付 くと結構飲んでるんですよ。でも今日はちょっとオシャレにと思って・・・あのテレビでやってたK-Port ください」

N:「はい。かしこまりました。嬉しいですね、お酒が大好きなんて」

ラ:「そうですか?『女なのに』って親とかにも言われるんですけどね(笑)」

私はカクテルに興味があってやってきたと言うラムさんに気分を良くしてK-Portを作りました。、バー 特有の落ち着きつつもオシャレな雰囲気を欲しているでしょうし、お酒もたしなめるということなので 『お任せ』頂いたら シェーカーで供するキレのあるショートドリンクスなんかを飲んで頂きたい 女性ですね。ま、それは追々

N:「お待たせいたしました。K-Portです」

ラ:「うわぁ キレイですねぇ。本当に色が分かれてるんですね。あ、これでかき混ぜて飲むんですか?」

N:「好きなように飲んで貰って良いんですけど、上の赤いのがワインなんです。そのままそれを味わう事が できますよ。かき混ぜるのは、それから後でも遅くはないですからね」

ラ:「混ぜちゃったら もう元には戻らないですもんね(笑) なるほど。じゃあまずこのままで、いただきま 〜す。うん 少し甘くて美味しいですね。お?氷が入っているから何ですけど、ちょっと強めのワインですかね?じゃあ混ぜてみて・・・・・・ああ、色が変わった 当たり前か(笑) うーん、なんか良いですねぇ 『私は今カクテルを飲んでるんだ』って気がします」

N:「なんかカクテルとかバーが初めてという女性の台詞としては満点じゃないですか。私もバーテン冥利に 尽きますよ」

ラ:「そうなんですか?実は私カクテルの事色々知りたいんですよ。興味があったのになかなか機会がなく て。そしたらあのテレビでしょ?で、私の知ってる人がここに行ったことあるっていうんですよ。で、 お酒の話しを聞くならNumberのマスターだよって」

N:「それ 誰だか聞いてもいいですか?」

ラ:「○○さんっていうんですけど・・・」

N:「あ、そうなんですか」

ラ:「知ってますか?」

N:「もちろん。ああそうなんですかぁ。じゃあ一緒に来られたら良かったじゃないですか。彼女も結構・・・」

ラ:「いや、ですから 彼女には内緒で経験積みたいんですよ。別に隠すわけじゃないんですよ。そのうち 一緒になることもあると思うんです。だけど彼女、お酒の事とっても大切にしてるんですよ。ここで 一緒に飲むその時には、少しでもお酒を解って飲みたいなぁって。で、今日はカクテルから教えてもらい たいんですけど」

N:「へぇ。大切な御友人なんですね。そういうことなら喜んで、遠慮なく語っちゃう(笑)」

ラ:「まず、なんでカクテルっていうんですか?」

N:「語源に関しては色々な説があります。例えば・・・昔メキシコの酒場で少年が木の枝を使って ドリンクをかき混ぜていました。イギリスの兵隊さんがそのミックスドリンクのことを知りたくて、 「それはなんだい?」と尋ねたところ、少年は混ぜていた木の枝の事だと思い「コック・テールだよ」と 言ったそうです。少年は混ぜていた枝のことを普段こう呼んでいたんですね。片方がささくれ立ってその ように見えていたからでしょう。しかし兵隊さんはカクテル=ミックスドリンクと思っています。以来カクテルという呼称が広まったというわけです。英語の表記がcock tail(雄鶏のしっぽ)とあるのもこのためです。

ラ:「へぇ おもしろいですねぇ。お酒をかき混ぜていた棒から・・・じゃあカクテルって言うのは 混ぜ合わせたお酒のことなんですね?」

N:「そうですね。ただ、 カクテル=酒(アルコール)という連想をされがちですけど、広義の意味においてはカクテルとはミックスドリンクのことですからノン・アルコールドリンクも含まれます。 ということはお酒の飲めない人も楽しむ事ができるんですね。
きっとカクテルという名前自体は新しいのでしょうけど、それ以前からも飲まれて また今でも広く 愛されています。カクテルには沢山のメリットがあります。あるお酒にアクセントを つけたり、アルコール度を増したり、またその逆もしかり。そして色とりどりの宝石のようなカクテルは その場の雰囲気さえ演出します。味だけではなく、名前がお気に入りだからとか 自分の大切な人生の ワン・シーンに存在したものだからとか、カクテルとの付き合いかたは無限に広がる可能性を秘めてい ますね。ましてお酒の飲めない人にさえそれらは与えられる特権なわけです。だから私はカクテル が大好きです。

ラ:「そうですねぇ。私が最初に来て、最初にお酒の事を聞いたテーマがカクテルっていうのは良かった んですかね?」

N:「お酒の世界はそれぞれが魅力的ですから、どこから入らなきゃいけないってことは無いと思いますよ。 でも、カクテルから興味を覚えるのは至極当然のような気がします。魅力的で有り且つ幅が広いカテゴリー ですからね。対象がお酒とお酒 あるいはそのほかの果汁やスパイスなどをミックスして作るカクテル は、今 まさに新しいものが生まれているかもしれない。今後美味しいカクテルができる可能性は 計り知れないわけですよね?そして味だけではなくて、カクテルとの関わりも一人一人色々あるでしょう し。ある意味、自由が信条だと思います。」

ラ:「それでも、魅力を感じている私なんかにしてみれば格式が高いんですよ。やっぱり決まり事 みたいな物があるんじゃないですか?」

N:「そう。いくら自由が信条とは言っても、なんでもかんでも混ぜればいいというものではありません。 間違った用いかたもあります。それは一概には言えませんが例えばベースっていうのがあります。 ウイスキーベースとかジンベースとか言う風に、 そのカクテルの元となるお酒・あるいは飲み物の事を ベースと言うんですけど、この特性を無視したものであってはならないということは言えますね。 つまりカクテルをつくる場合、当然のことながらそのベースの特性を知っておく必要があります。 もちろんお店でオーダーするときもこれを知っていると いわゆるハズレが少なく、当たりをひいて楽しい ひとときを過ごせる可能性が高くなりますよね。自分の求めてるものが何か解るんですから」
世界4大ホワイト・スピリッツ

ラ:「そのベースっていうのにコレが良いっていうのがあるんですか?」

N:「長い歴史の中で愛されたカクテル。色々な国・季節・時間・目的の中でそれぞれにマッチした処方が 生まれ、飲み続けられて来ました。この処方の事を料理同様レシピって言ってますけど、そうした歴史か らポピュラーなベースとして用いられてるものが有ります。たとえばスピリッツ、つまり日本酒やワイン のように麹などの微生物が醸造して作ったお酒ではなくて、そこから蒸留してより高いアルコール濃度を抽出した蒸留酒には、ウオッカ・ジン・ラム・テキーラなどがあって、俗に世界4大ホワイト・スピリッツなどと呼ばれてますね。」

ラ:「だいたい聞いたことがありますけど、いったいどんなお酒なんですか?ベースとしては?」

ジン(GIN)

N:「まずジンですね。ジュニパー・ベリー、日本では杜松といいますが、この実の香りがついたお酒です。原料に細かい規定はなく、各社コリアンダー・シナモンなどのスパイスを用いて独自の配合で色々な味と 香りつけをしたお酒です。しかしかならずジュニパー・ベリーは使うことが義務づけられていて、それ由来の香りがあるんです。良く松脂臭いと形容される事があるんですけどそのためでしょうね。」

ラ:「クセがあるんですか?ジンフィズとか聞きますよね?」

N:「私は好きですけどね。クセっていうのは個性の事ですから、人によっては受け入れられない場合も あるでしょうね。とにかくジン特有の個性があるわけです。だからこれをベースにするカクテルはジンの味わいなどを活かしたものが多いんです。美味しくジンを飲むひとつの方法としてカクテルにする、といっ たところでしょうか。ジンフィズ・ジンライム・そしてマティーニとか代表的な物が沢山あります。

ラ:「じゃあマスターの好きなジンで何かカクテルをお願いします」

N:「ありがとうございます。それじゃあ・・・・・・・お待たせいたしました ホワイトレディーです」

ラ:「うわぁ、やっぱりこうやって作ってもらうとカクテルって感じがして良いですねぇ」

N:「このシェーカーでシェイクするのは魅せる効果もありますよね?比重の違う物同士を素早く混ぜ合 わせて冷たくする、カドをとってまろやかにするっていう目的のカクテルに使う技法なんです」

ウオッカ(VODKA)

N:「ウオッカも聞いたことが有ります?」

ラ:「ロシアとかの寒い国の・・・飲むとカーッとなる強いお酒でしょ?」

N:「まあそういうイメージで知られてますよね。ウオッカも原料の細かい規定より、その作り方に特徴が あります。フレーバード・ウオッカと呼ばれる香り着けしたものは別にして、蒸留したあと白樺や椰子の 木を炭にしたもの(活性炭ですね)でろ過するんです。こうすることで無味・無臭と形容される ようにクリスタル・クリアな蒸留酒となるんです。本当はエチルアルコールと原料 由来の味わいがあるんですけど、概ね原料の持つ雑味というか、クセがなくなるんです。だからこの酒は 他の副材と非常に合います。というより副材の邪魔をしないって表現の方がいいですかね。オレンジジュ ースと混ぜたスクリュードライバーっていうカクテルは、限りなくオレンジの味に近いですし、分量を 加減すればアルコールの弱い人にも強い味方になりますね。副材を主役にする名脇役なんですよ。」

ラ:「だから飲み過ぎちゃって『悪酔いする』っていわれるんですね?」

N:「スクリュードライバーの事をレディーキラーっていうくらいですからね(笑)」

ラム(RAM)

N:「そしてラムですね」

ラ:「これはさすがに興味がありました(笑)。良くお菓子を作るときに入れますよね?」

N:「良い香りがしますよね。原料はさとうきびなんです。一般にはこのさとうきびの汁を精製して モラセスという糖蜜をつくり、これを醗酵・蒸留したお酒です。一般にはと言ったのは、樽であまり寝 かせないホワイトラムを中心に、ライトラムの場合は糖蜜じゃなくて絞り汁から作ることがままあるので。 どちらにしても砂糖をつくるくらいの原料ですから糖分としては非常に純然たるもの。アルコール というのは糖から作られるんです。」

ラ:「へぇ そうなんですか」

N:「だから果糖を多く含むフルーツとの相性が良いんでしょうね。代表的なラムベースのカクテルを みると、果汁とミックスして供されることが多いんです。ブルー・ハワイ、マイタイ、ピニャコラーダ とかって有名ですよね?」

ラ:「ハワイに行った時飲みました 雰囲気で(^^)」

N:「その雰囲気っていうの、ムードもカクテルを美味しく飲む要素ですよね。カクテルが演出する効果も ありますから、相乗効果なんでしょうね。ま、誰と行ったの?なんて聞かないことにしておきます(^^)」

ラ:「うーん残念ながら、開放感をもたらしてくれる南国の太陽が疎ましかったバカンスですよ(^^;) 南国のムードはいいですから、バーらしいラムベースのカクテルをリクエストします」

N:「はいかしこまりました。では・・・・・お待たせいたしました。リトルプリンセスです」

ラ:「今のは何ですか?シェーカーを使わないで・・・」

N:「この器具はミキシンググラスと言って、やっぱり混ぜ合わせるものなんですけど、比重の差が少ない 材料同士で十分混ぜられる上で、繊細な味わいや香り、キレの良さを損なわないっていう目的をもって カクテルを作るときに用います。ラムの特性としてフルーツと合わさることによって新しい味を創造 出来るということがあるのは勿論、単体で飲んでも美味しいこのお酒の素顔の部分にアクセントを加えた カクテルがこのリトルプリンセスですね。ラムと合わせたのはベルモットと言って、ワインに香草などを 配して香りや味を付けたお酒なんです。ちょうどさっき言ったジンベースのカクテルはジンの持ち味 を楽しむものが多いっていうやつのラムバージョンですね」

ラ:「ああ、美味しい。私、ラムをそれだけで飲んだこと無いんですけど、料理とかで使ったことは ありますからほのかな香りが解りますよ。匂いをかいだだけでは解らなかったですけど、口に入れたときに 確かに。これが繊細なってやつですか?なるほど。ベストはひとつじゃないんですね。」

N:「それが、私が『カクテルの信条は自由』と言う由縁なんです。ただ、私たちの社会にも言えることで すが、自由っていうものにはルールが存在しますからね」

テキーラ(TEQUILA)

N:「そして最後にテキーラですね。メキシコのテキーラという町で作られる蒸留酒で、竜舌蘭の一種アガベ・アスール・テキラーナっていう品種を蒸して粉砕し、その汁から作った醸造酒プルケを蒸留してつくった ものです。独特の味わいから成るこの酒をベースにするカクテルは、もちろんテキーラ本来の味わいを楽しむことを意識してつくりたいと思います。マルガリータっていうカクテルはまさにソレですね。もちろん このベースと他の副材をミックスすることで新しい味わいを作り出すことも可能だと思います。

ラ:「そうなんですか?」

N:「私の場合、レシピを見ますとまず『どんな味がするんだろう?』って想像します。お酒は好きで色々 飲みましたから、それなりに解る方だと思うんですね。ところが想像とは違う結果に驚くこともあるんで す。そうした中から新しい組み合わせを見つけたり思いついたりして、実際に作ったこともあります。」

ラ:「オリジナルカクテルってやつですね?」

N:「そう。最初に言いましたけど、カクテルは今この瞬間新しいものが誕生していたりします。それは バーマンが自分やお客さんの思いをカタチにしようという賜物です。バーマンである私が自分たちが作る ものを賜物と言うのは変に思うかも知れませんが、カクテルの歴史は誕生以上に消えていくことに 重みがあります。良いカクテルというのは結果として人々に愛される、飲み継がれて行くレシピだと 思うんです。それがスタンダードカクテルとなって今に伝えられています。それは同業者とは言え、先達が 我々お酒を愛する者に伝えてくれた賜物だと思うのですよ。
ちょっと話しがそれましたが、そういう素晴らしいカクテルの創造にバーマンというのは努めている わけで、美味しいオリジナルカクテルを作ってみた、と 思ったらもうとっくに誰かが作っていた なんて ことは多々あるわけです。でもテキーラは世界的に知られるようになったのはメキシコオリンピック以降 ですから、未知なる創造への可能性が高かったりするんですね。副材になるお酒とかもどんどん開発されて いますからね」

ラ:「そうかぁ。お話を聞いてカクテルってオシャレなイメージの裏にバーテンダーの人たちの思いが あることを知りましたよ。それに、お酒の興味がカクテルから入りましたけど、ラムやテキーラとか ひとつひとつを知りたいって思いましたね。やっぱりカクテルから入ったのは間違いじゃないですか? マスター?」

N:「そんなことはありません。ひとつひとつのスピリッツにあたたかい思いを向けてあげられるのも、 カクテルっていう存在があったればこそじゃないですか。方向転換してスピリッツに行くにしても、 自分の足跡としてカクテルと刻んだ事実は、お酒を愛する者としてラムさんの財産になると思いますよ。 それにお酒は、思いのままに飲むのが一番ですから」

ラ:「そうですか。そうですよね。じゃあカクテルとスピリッツを同時に欲張って楽しみますか。 理解するまでとても時間がかかりそうですけど(^^;)」

N:「他にもウイスキーやブランデー、今日いったラムやテキーラも熟成させることでまた違った個性を 持つんです。たくさんの対象がありますけど、その分沢山のたのしい経験ができるってことですからね。 でも、どんなに姿形が変わってもベースの個性を顧みることを忘れなければ、TPOにあった カクテルのベストチョイスが見えてきますよ。まずは美味しく飲むことが大切ですけどね」

ラ:「あ、それなら自信があります。今日頂いたカクテルはどれも美味しかったですもの。カクテルを知る のって大変かと思いましたけど、なんだか自然に身に付いちゃうかんじです。元気にもなれますしね。 こからもよろしくお願いしますね」

N:「いえいえ、こちらこそ楽しい一時をこれからも期待します。素地がいいんですよ。お酒を愛する気持ちがありますからね。それから最後のリトルプリンセス、別名がパワーっていうんですよ」

ラ:「え?そうなんですか?バーテンダーの思いが解るような気がします。そして やるなカクテル、やる なお酒って感じですね(^^)」

カクテルを通じて、素晴らしいお酒の世界を体験して頂きたいと思っています。そのお手伝いをさせて 頂きたい。Numberの願いです。 三年ぶりの改訂に寄せて。

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