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UPDATE.1998.2/8
2001.1/28改訂
第4回 ジン
末期の酒
う:「焼酎のお湯割りを下さい」
N:「これまた珍しいですね、うつむく青年さん」 う:「なんですかまた?その説明的な台詞は?またネタに使うつもりですね?(笑)」 N:「いや、この間から『お酒について語らせて』の改訂を思い立ってね。なんか使える事を言ってくれそうな気配を感じたものですから(^^;)」 う:「どこに使うつもりなんです?」 N:「うーん、何処ってわけじゃないけど、特に最初の頃の文章がね。お酒のウンチクだけなら何処でも検索 なりかけられるじゃないですか。それに元々が『酒文化を広めたい』なわけだから、専門的な知識を 無視するわけじゃあないんだけど、お酒を知らない人にこそ楽しんで読んでもらえるものじゃないと、って 思うわけですよ。そうすると最初の頃のはねぇ・・・。多分 全部対話形式にすると思うんで、一杯 お話しして(笑)」 う:「いや、『してっ!』って言われても・・・いいんですかっ?!それで(笑)」 N:「いいのいいの(^^) まあ話しは戻すけど、焼酎 お好きですよね? 今でこそスピリッツのイメージが 強いうつむく青年さんですけど・・・」 う:「ソレ、こないだも言ってました(笑)」 N:「そうだねぇ(^^;)そういえばこの間みんなが集まってくれたとき、うつむく青年さんが当たり前のよう にロンリコ飲んでたらみんながビックリしてましたね。151プルーフの強さに」 う:「そうですねぇ。」 N:「私も色々質問されて、『お近づきになってから このロンリコをお奨めしたのは私なんですよ、その後 喜んで頂いて、今ではうつむく青年さんの代名詞的な存在になったことを嬉しく、また誇りにさえ思ってる んです』なんて話しをしてたんですけどね」 う:「美味しいですからね。でもマスターが自分の最後の一杯って言ったときにはどんなお酒をチョイス するんですか?」 N:「え?私ですか?難しいなぁ。私 好きなお酒沢山ありますからね。それも強い思い入れをもって捉えているお酒が。今後変わっていくものもあるだろうし。でも、末期の酒ですかぁ。今の時点で上げるなら ・・・ラガー・・・いや、自分の為だったらジンかな?やっぱりゴードンってことになるんでしょうか?」 う:「ジン・・・ですか」 N:「ええ。ウイスキーの話しで、懐かしさの話しをしたじゃないですか。同じような記憶の中にジンとの 出会いがあるんですよ。初めて飲んだ事ではなくて、目に映るシーンとしてなんですけど、60〜70年 代に良く飲まれたカクテルがあるんですね。今に比べれば日本にもたくさんの種類のリキュールやスピリ ッツもありませんでした。その頃のスタンダード・カクテルにジン・フィズやバイオレット・フィズが あって、先代がやってたお店にくるお客さんの中で、きれいなお姉さんたちは決まってそれらを飲んで いたんですよ。」 う:「キレイなお姉さん・・・。エロだ(TT)」 N:「出たな(^^;) そういえばその時使うジンのボトルがサントリーのものだった。勿論今とはデザインが 違います。ゴードンのボトルを少し薄くしたような、滑らかな曲線で構成されたようなボトルでね。 度数はやはり高いのと低いのがあって、それぞれ緑と青のラベルでした。私は緑のボトルが好きで 、良く匂いを嗅がせてもらってましたね。変わった子供だったな(^^;)」 う:「へぇ」
バイオレット・フィズ
N:「極一般的なカクテル、例えばフィズのレシピもお店によって微妙に違うことがある
んです。バーマンの意図が加味されてね。で、バイオレットフィズなんですけど、パフェ・タムールを
1ジガー(45ml)、レモン1/2個をシェイクしてタンブラーに注ぐ。これが一般的なレシピだと
思います。ですが当時はこれにジンを15ml入れるレシピがあって、これも一般的といっていいくらい
広まっていたようです。実際にはこの処方 インペリアル・フィズ等という名前のものみたいなんだ
けど、これは良い悪いではなく、時の流れが作り出した日本の酒文化でもあるとおもうのです。
それでそのバイオレットフィズなんですけど、それはきれいな色だなぁって思っててね。私はあまり
甘口のカクテルは好んで飲みませんが、こんな想い出があるからとても好きなカクテルです。香りの
あるリキュールが日本人には苦手な人も多いようですが、この香りはなんとも切ない香りで、
そんなところがジンにさえイメージを植え付けたかもしれないですね。」
う:「やっぱりゴードンが好きなんですか?」 N:「そうですね。色々好きなんだけど、好みに合ってるみたい。お酒全般に濃厚というか、馥郁としたもの が好きですからね。バーボンしかり、日本酒しかり。」 う:「ここにはいくつかのジンが常備してありますけど、その選定って?」 N:「私なりに、飲む人が分かり易い違いを 個性として持ってると思うものを選んでます。」
Numberのジン
人それぞれの好みがあるのは当然で、これが一番だからというわけではないのですが
ナンバーに常備している私の選んだジンを紹介します。色々ある中から厳選、
というより限定せざるをえないわけで、個性が差別化できるものを選びました。
ゴードン
柑橘系の香り・味わいを中心に飲みごたえも濃厚、私の一番好きなジンです。パーソナルなカクテルの
マティーニはこれをベースにしたものが好きです。
ビフィータ
ラベルに描かれたバッキンガム宮殿の近衛兵が老兵でしょう?このラベルからも
ロンドン・ドライジンの正当を自負するものではないでしょうか。ゴードンほど重くもないけど、香りや
味わいはリッチですね。バランスのとれた、「ジンとはこれだよ。」と言える一品だと思います。
タンカレー
最近人気の高いジンですね。シャープな切れがあって香りも穏やかにつたわり
ます。女性にもファンが多いですが、最近の傾向なんでしょうね。日本酒やウイスキーも端麗やすっきり
したものが好まれる時代ですからね。
シュリヒテ・シュタインヘーガー
こちらはドイツのジン。ドイツではコルンという穀物のスピリッツがあります。
またジンヘッドと呼ばれるかごにジュニパーベリーを入れて作るのが通常のドライジンの製法なんです
けど、それとは異なり、ジュニパーベリーを直接漬け込んでから蒸留したスピリッツと混ぜ合わせる
為、ジンとはみなさない人もいるんです。香りのほうは以上のような観点から僅かで、
かなりスピリッツ然とした仕上がりです。
私はこれをジンのカテゴリーに入れていいと思っています。なんでかって言うとジンの製法・配合エキス 等は各メーカーの判断により作られるんです。その中にあってジュニパーベリーを使用するあたりは正に ジンの持ち味であると思うからです。シュタインヘーガーのジュニパーはイタリアはトスカーナ地方で 採れたものだけを使用してる このあたりも拘りの現れですよね。
その他
N:「とまあ、それぞれの個性が濃厚からライト、もしくはシャープになるような
ラインナップなんですね。通常使うカクテルのベースに用いるのは平均的なジンが良いと思うのですが
、要望があれば他のベースでも作ります。私がジンを好きなので時々他の銘柄も入荷します。
結局ジンはあのジュニパーベリー由来の香りと、作り手の意識によって個性が
決まります。なにがいいとか悪いとかではなく、自分の好みを見つけるところから
始めてみるのが面白いですよね。」
う:「前にねずみさんがお土産でくれたオランダのジンなんかはどんなジンなんですか?」 N:「もともとジンはオランダが発祥の地と言われています。大学の先生が処方して、薬屋さんなんかに 置いてたんです。解熱、利尿効果があるというので 風邪薬として用いられていたそうです。 で、当時経済的にも大国だったイギリスに渡って、安価だったから庶民の間で親しまれたんです。 お酒は国にとって格好の税収の的になりますよね?高価なスコッチとかで一悶着あって、同時に安価な アルコールであるジンは市場でもてはやされるんだけど、そうなると悪いことをする業者もいて 粗悪な 品もでまわるんですよ。重ねてオランダのジュネヴァは樽などで香りを付けたりカラメルを加えたり とかしてたから、違う味覚を求める人々もいて、イギリスのロンドンドライジンというカテゴリーの確立へとつながったそうです。もともと酒っていうのはその国や地方独自の成り立ちがあるわけですけど、 それを扱う事になる各国の法律や慣習に便宜上当てはめるわけですよね。だから多用な評価が存在 するわけ。ジュネヴァは大抵 樽香やその他のアクセントが用いられるのでその個性で好みが分かれますね。 う:「なるほど」 N:「そう言えば、タックンが好きなボンベイのサファイアは柑橘類やコリアンダーなど10種類のエキスをバラエティーに配合することで、結果ジュニパーベリーの香りは穏やかになってます。ライト&スムースの最近の傾向から生まれたって言えるかもしれませんね」 う:「古くから親しまれている、古いお酒のイメージがあるジンですけど 色々進化してるんですね」 N:「かといって古い物が排除されないあたりが ジンに限らずお酒の世界の素晴らしいところですよね。 ジンは、きっと嫌いになることなんて ないだろうなぁ 私は」 |