きまぐれバロン


バロン 「名前はバロン〜〜、きまぐれ〜な犬〜〜」

と、いうのはご存じの通り、ペリーヌ物語のエンディングテーマですが、昔のアニメではエンディングで主人公の飼っている動物の歌が使われるというケースは時々ありました。『さるとびエッちゃん』のブクの歌とか『魔法使いチャッピー』のドンちゃんの歌とかもそうでしたよね。『ハクション大魔王』のあくび娘の歌などもペットではありませんけど、似たようなパターンと言えるかも知れません。

 バロンは歌のタイトル通りにきまぐれな犬です。ウサギなどの小動物を見つけるとすぐに追いかけて行きます。川の水を汲もうとすると、魚を追いかけて水を濁らせてしまいますし、池のほとりの小屋では小屋の中でおしっこをしようとして「家の中でおしっこをする人がありますか!」とペリーヌに叱られます。肉屋の前で芸をして見せて、食べ物をねだったり、マルセルが盗みそこねたパンをくすねようとしたり、花畑を荒らしてペリーヌが折角取り戻したお金を無くす羽目になったり……、また護衛隊長に任命されても全く役に立ちません。とにかく呑気に好き勝手に行動したがる奴なんですよね。

 名劇には何匹ものそれぞれ個性的な犬が登場しますが、バロンはその中でも気まぐれさと役にたたなさという点ではナンバー1と言ってもよいでしょう。
 『牧場の少女カトリ』に登場したアベルなどは結構きまぐれでバロンと似たような性格をしていましたが、牛の見張り等でカトリを助けて、立派に仕事を果たし役に立っていました。ライッコラ屋敷の人たちも最初は変な犬だと言いますが、アベルの仕事ぶりを見て考えを改めます。知らない人から見ると変な犬ですけど、れっきとしたダックスフンドですしね。

 また犬以外の動物できまぐれでいたずら者と言えば『あらいぐまラスカル』に登場したラスカルもおりますね。ラスカルもきまぐれ、いたずら者という点ではバロンと肩を並べることが出来るキャラだったかも知れませんが、バロンとの決定的な違いはラスカルは誰が見てもかわいいと思えるところでしょう。対してバロンはペリーヌは「かわいい犬」であると主張しますが、他の人々は変な顔をした間抜けそうな犬という感想を抱く人が多かったようです。
 ラスカルの場合は番組のタイトルにもなっていて、スターリングと並んで主人公と言ってもよいキャラですので、その点、バロンにはハンディがあるんですけどね。
 それに『あらいぐまラスカル』はラスカルとの触れ合いを通じてスターリングが成長していく物語と言っていいと思うのですが、それに対してバロンが登場する作品は決して『きまぐれバロン』というタイトルではありませんし、バロンとの触れ合いを通じてペリーヌが成長していくという物語でもありません。はっきり言ってしまうといてもいなくてもどっちでもよいような犬なんですよね。(実際、原作にはおりませんし……。)
 そういう意味でラスカルと比べるのもバロンにとってはちょっと酷だったでしょうか……。(^_^;)

 バロンはそれなりに賢い犬、であるというのは時折りエピソードの中で感じさせるところもありますが、その賢さを有益な方向に発揮することがあまりありません。
 役に立ったと言えば、すいか泥棒と捕まえた時と、ペリーヌが行き倒れ寸前になった時にパリカールを連れてきた時くらいだと思いますが、すいか泥棒を捕まえる前にはすいか畑の農夫の兄弟にも噛付いてますし、ペリーヌが行き倒れ寸前になってしまったのも、バロンが花畑を荒らしたことでお金を無くしてしまっていたからなんですよね。部分的なエピソードだけを見ればバロンの存在が役に立ったと言えなくはないですが、前後の関係を考えるとバロンが手柄を立てたと言い切ってよいものかどうか疑問が残るような気がします。(^_^;)

 そんなバロンですが、ペリーヌにとってはやはりかけがえのない存在なんですよね。私から見ればお荷物以外の何物でもない奴……、みたいな気もするんですが、でもペリーヌにとってはだからこそ馬鹿な子程かわいい、とでもいいますか、そんな気持ちがあったのかも知れません。
 それに気まぐれでペリーヌを困らせることは多かったバロンですが、ペリーヌのことが大好きだってのは画面から伝わってきてました。

 バロンは名劇の他の作品に登場する犬や動物に比べて、絵的にも一番マンガっぽい犬であるような気がします。名劇に登場する動物たちって大抵の場合、結構リアルですよね。犬にしたって見ただけで種類が特定出来るものが多いですし、山羊にしても牛にしてもあらいぐまにしても結構リアルに描かれています。町角でダックスフンドを見掛けると『あ、アベルだ!』とか思ってしまいますし、動物園であらいぐまを見るとラスカルに見えますし、山羊の子供を見る機会があると『ゆきちゃ〜ん』と声をかけたくなる人も名劇ファンの中にはおられるんじゃないでしょうか? しかしバロンみたいな犬はなかなかいないような気がします。
 何故バロンだけこんなマンガっぽい犬になってしまったのか?
 私の思うにペリーヌ物語って特に後半は辛い重苦しい展開になってしまいますよね。その中にこういうコミカルな犬がいることで重苦しさを緩和しようと意図があったのかも知れない、とも考えられます。
 主人公が辛い思いをする作品と言えば、フランダースの犬や小公女などもありますが、これらの作品は主に外的な要因、いじめや貧乏等で主人公は辛い思いをする訳ですが、ペリーヌの場合は少し違います。勿論、ひとりぼっちの旅のシーンなどではそういうこともありましたが、特に後半なんですが、ペリーヌが辛い思いをするのは主に内的な要因、祖父の愛情を求めながらもビルフランが嫁や孫娘に対して冷たい言葉を口にするのを目の当たりにしたり、エドモンの帰りを待ちわびているビルフランの言葉を辛い思いをしながら聞いていたり、そういう辛さなんですよね。
 そういう意味でああいう三枚目っぽい変な犬がいることでほんの少しでもペリーヌの心を癒す役割を与えられていたのではないか? と、そういう風にも考えられそうな気がします。唯、後半はバロンの登場頻度は減ってしまっていたような気もしますし、ちょっとこの意見は説得力に欠けるかもしれませんが……。(はっきり言って自分で書いていても無理矢理なこじつけだなぁ、という気がしてます。(^_^;)
 でもビルフランの屋敷の前庭でバロンと一緒に駆け回っていた時のペリーヌの笑顔は凄く印象に残ってるんですよね。ペリーヌのこんな笑顔を久しく見たことがなかったな・・、と。

 気まぐれで間抜けな顔をしていて、ペリーヌを困らせることも多かったバロンですが、でもやっぱりペリーヌ物語という作品の中では欠かすことの出来ないキャラだったのではないか、そんな気がします。


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