ときめきメモリアルショートストーリー

いつかきっと・・


エピローグ 〜いつかきっと、また会おうね!〜

 あれから留さんとは会っていない。きっと留さんが自分で言ったようにもう
一度、一から花火をやり直す為に、そして留さんの“昇り竜乱れ七変化”を作
り出す為に、この町を出て行ったんだろう。

 留さん……、たった一日、一緒に過ごしただけの人だったけど、悲しい思い
出を抱えていた人だったけど、あたし、留さんに会えてホントに嬉しかったよ。

 あの日の留さんの後ろ姿、いまも鮮明にまぶたの裏に残ってる。辛い思い出
を抱えてそれに取り込まれてあがいていたそれまでの留さんの淋しい後ろ姿じ
ゃなく、しっかりと自分の夢を見据えて立ち直った頼もしい男の人の後ろ姿だ
った。少なくともあたしにはそう見えた。

 あたし、明るいふりをしてたけど、ホントはコンプレックスの塊だったんだ
よね。ちゃらんぽらんな自分を演じていたのも、本当は淋しさから逃げ出す為
だったんだ。留さんも自分をごまかして生きていたけど、でももう一度花火を
やり直すという決意をした時点で一つ壁を乗り越えたんだ。
 あたしも留さんに負けてられないよね。何かあたしにしか出来ない、あたし
だけの夢を見つけたい。
 あの人のことはショックだったけど、あたし、自分で言った通りに立ち直り
は早いんだ。今はまだ悲しいけど、もう少し泣いたらきっとまた前を向いて歩
いていける……。
 あたしはまわりの人から“落ちこぼれ”だって散々言われ続けて、自分でも
自分をなんの取り柄もない唯の馬鹿な女の子だと決め付けてたんだと思う。で
も留さんはそんなことないって言ってくれた。あたしにはあたしにしかない魅
力があるんだって。
 うん、あたし留さんの言ってくれたその言葉、忘れないよ。あたしはあたし
だし、あたし以外の人間には絶対なれないんだから、あたしはあたしらしく生
きていかないとね。

 いつかきっと、また会えるよね。留さんは“昇り竜乱れ七変化”を作り出せ
たら、必ずあたしにも見せてくれるって約束したもん。その時にはあたしも留
さんに“ガキ”なんて言われないようなもっと素敵な女性になってるから……。
 それまでにはあの人よりもっと素敵な彼氏を作って留さんに自慢してやるん
だ。
 もしかすると留さんもかわいい奥さんを連れてるかもね。でももしかすると
留さんのことだから彼女さんの面影を胸に秘めたままずっと独身を貫くのかも
……。それはそれでかっこいいじゃん。

 その時、どんな風になってるかはまだ判らないけど、きっと留さんにあの時
よりももっと素敵な笑顔を見せてあげられるようになっていたい。

 留さん、忘れないよ。いつかきっと、また会おうね。

 いつかきっと・・。

                            <Fin>


  初出 1997年5月11日〜6月8日
  PC−VAN アーケードゲームワールド
  #3−6ときめきメモリアル #3449〜#3450,#3470
                #3487〜#3488,#3497〜#3498
                #3519〜#3521
  このSSは上記のボードに掲載されたものに、一部加筆修正を加えたもの
  です。

あとがき


 あとがきでーす。このSSはときメモボードにて週一回くらいのペースで約
一ヶ月に渡って連載されたものです。
 連載形式ということで、伏線とか次回への引きの部分とかいろいろ気を使い
ましたが、書いている時はしんどかったですけど、でもとっても楽しかったで
す。
 特に朝日奈さんの一人称の文体が書いてて楽しかったところでしょうか。女
の子の一人称の形でSSを書くのは今回が初めてだったのですが、さほどの違
和感はありませんでした。女の子の一人称って自分では書いたことがなくても、
そういう形式の小説自体は結構読んでいたからかも知れません。
 それに朝日奈さんの明るいキャラクターもありまして、テンポよく書けたよ
うな気がします。(途中、第三話、第四話あたりで話がシリアスな方向に流れ
てしまった部分は結構しんどかったのですけど。)
 これが古式さんの一人称、なんてことになればこうはいかないでしょうねぇ。
(^_^;)

 さて私のSSの特徴とでもいいましょうか、今回のSSでも割りと好き勝手
に独自の設定を作ってます。朝日奈さんがきらめき高校に入学出来た経緯とか、
留さん関係のエピソード、昇り竜七変化の伝説とか、朝日奈さんの家庭環境、
などなど、みんな勝手に作った設定です。
 ときメモってゲームでは割りとその辺、自由度が高いというか、ゲーム中で
は匂わせる程度ではっきりとは語られない設定なんかがありまして、その辺り、
想像力を働かせる余地があるんですよね。

 もしかするとみなさんの持っている朝日奈さんのイメージと少しずれている
と思われる部分も出てくるかも知れませんが、少しくらいは目を瞑って頂けれ
ばありがたいです。(^_^;)

 ゲームでは三年目の神社の縁日に“昇り竜乱れ七変化”が打ち上げられるこ
とになっていて、このSSの時期からたった三ヶ月後ということになりますの
で、ちょっと辻褄が合わないような感じになってしまいそうなんですが、ま、
細かいことは気にしないで頂けると嬉しいです。(^_^;)


 読み返してみると相変わらず下手な文章でうまく書ききれなかった部分も多
くて、その辺はちょっと忸怩たる思いもあるんですが、でも書くのはしんどか
ったですけど、やっぱり楽しかったです。

 ではでは読んで下さったみなさん、どうもありがとうございました。またS
Sを書く機会がありましたら、よろしくお願い致します。

                      1997/10/17 眠夢

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