最新更新 10/17/97

ヒヤリハットから派生した安全に対する一考察

 ヒヤリハットは安全用語です。ヒヤリとかハッとしたできごとのことで、事故には至らないものを指します。でも、これが300件起こると確率的に1件は本当の事故が起こるという(この確率であってますでしょうか?)ハインリッヒ(とかなんとか、記憶があやふやです)の法則があって、事故ではないからといって軽視してると本当の事故が起こるよ、という戒めです。なぜヒヤリハットが起こったかを考え、ヒヤリハットさえも無くする努力をしなければ事故に対する安全対策などはできないということです。私の職場では、化学薬品、ガス、高圧電気などの危険な要因が数多くあります。でも無事故で過ごせるのは、危ない物や危ない作業の危なさを知っているからではないでしょうか?何をすべきでなにをすべきでないのかを知っているという訳です。

 安全に対する感度は人それぞれ違います。でも、日頃から訓練をすることによってそれを高めておくことはできるのです。訓練と言っても大袈裟なものじゃなくても良くて、例えば危険予知トレーニング(略してKYTといったりもしますが)とかが有効です。JAFの会誌に毎号載っていて、クルマの運転席から撮ったみたいな一枚の写真を見せて、さて、何に注意しなければならないでしょうか?といったクイズみたいなのをドライバーの皆さん見たことあるでしょう。あれのことです。また、事故の事例を多く学び、原因と対策自分なりに考えてみること、これはとても良い訓練になります。DAN-Japan(Divers Alert Network of Japan)の事故の情報等が参考になります。

 次に、安全に対する認識を高めると共に、事故を防ぐためにしなければならないことを考えてみましょう。まず何と言っても、ダイビングリーダー(インストラクター、ダイブマスターだけのことじゃなく、パーティーのリーダー)の指示を守ることでしょう。ブリーフィングを大事にしましょう。「残圧70になったら教えて下さい。」なんてガイドのよく言う台詞ですが、実は私は、このやりかた好きじゃないのです。だって普通、ダイバーはバディーが近くにいるんであって、ガイドはちょっと遠く、あるいはみんなの先頭にいるじゃないですか。残圧が70切ったらわざわざガイドに知らせに行かなきゃいけないんですよ。味噌汁だったら、前の人のフィンを追いかけて泳ぐみたいな移動するでしょう?ガイドまで申告するのに前を行くダイバーを追い抜いて行かなきゃならないんですよ。流れに逆らって泳いでいるとき...。ここまで読んで、これは結構危険なことだと気付かなかった方は安全に対する認識薄いと言わざるを得ません。自分で訓練してください。イメージトレーニングからでも始めた方がいいですよ。だって、なんらかの理由で決められた残圧切ったことを知らせることができない場合には、どうしろっていうのでしょう?勝手に浮上されてもガイドは困るでしょう?初心者は慣れてないんだから、バディーにエアー求めても、うまくオクトパスブリージングをバディーと続けられないんじゃないかと心配するのが普通でしょう。もしバディーがオクトパス持ってなかったらバディーブリージングしろとでもいうのでしょうか?ファンダイブでこんな状況が起きる可能性があるなんて自体、由々しき問題だと思うのです。対策は至って簡単。ガイドが自分であらかじめ決めておいた場所や時間になったら、パーティーのメンバー全員の残圧を聞いて(見て)回ればそれで済む話しなのです。これくらいのことが実は安全性を高めるのに寄与するのです。特に初心者の不安はリーダーに残圧見てもらってOKサインもらえばものすごく軽減されるのです。リーダーを勤めるようなベテランダイバー(プロのダイブマスターやインストラクター等は当然)は是非、最も経験の薄い、あるいは体力の無いメンバーのレベルに合わせたダイビングを企画するという最もあたりまえのことをしっかり考えて実行することが大事だと考えます。自然相手安全対策がワンパターンで万能な訳がないのは、少し考えれば誰でも分かることだと思うのです。

 一方、「残圧70になったら教えて下さい。」と言われて、自分の残圧が70になった時、「他の人も申告しに行ってるようには見えないから、いいや」とか勝手に思って申告しないという困った人もいるのです。こういう人は、自分が最もエアーの消費が速くて、1番先に残圧70になるんだということを夢にも想像できないのか、あるいはすごくシャイで言いに行けない(行かない)のか知りませんけど、これも上で述べた「なんらかの理由」に当たるんだと思います。もちろんこの場合は申告しないダイバーが悪いと皆さん思うでしょう。その通りです。でもリーダーは、こういう人もいるんだということを危険予知という意味で知っておくべきなのではないでしょうか?指示を守らないからといって、危険な目に遭わせて良いはずはありません。プロ、アマ問わずリーダーはそれくらいの覚悟が必要だと言いたいのです。指示を守ってくれなかった怒りは、エグジットしたらすぐその場で、他のメンバーにも聞こえるようにその人を叱ることで発散させましょう。「xxさん!ちゃんと残圧70切ったら教えてこれなきゃ困るじゃないですか」と。そのあと、少し冷静になれたら(怒りは少し抑えて)指示を守らないと安全なダイビングは保証できないし、他の人の迷惑にもなるんですよ。と説明してあげるのがいいと思います。そのとき言い訳を言われるかも知れません。「だって70切った時リーダーはすごく遠くにいて言いにいけなかったんだもん」とか。

 話がリーダー側の人に対する意見にずれたので、参加する側に戻りますと、リーダーの指示を守ろうということでした。残圧チェックだけではありません。ボートダイビングの時の潜行パターンとして、アンカーロープを伝って潜行して下さいと言われたら、そうしてくださいな。中級以上だと自認しているダイバーにありがち。勝手にヘッドファーストとかでダーって潜られると、バディーが初級だったら(初対面同士でも人数の関係とかでろくにお互いのスキル知らずにバディーになることってあります)オイテカナイデーってそれだけで初級ダイバーはパニックになってしまうってことを、中級にもなれば分かるでしょうが。より経験の深い人が経験浅い人を助けるのは常識です。相手がどれくらいのスキルなのかはエントリーの様子見ると助けが必要なレベルかどうか位はわかるでしょう。それをしないで本人は、アンカーロープなんて伝わらなくったって今日は潮も入ってないし流されないで平気で潜行できるもん、とか自分のことしか思っていないのでしょう。リーダーの指示に従わないと自分は良くても他の人が良くないという場合もあるのです。ダイビングスキルは中級でも安全に対する感度の低いあぶないダイバーの例でした。リーダーは色んな意味合いを込めて指示を出しているのですから、勝手に解釈しないでちゃんと従うようにしましょうね。

 事故が起こらなければ結果オーライなんていうのは最も困った考えなのです。ヒヤリハットというのは安全に対する感度が高い人でなければ感じないのかも知れません。危ないかもしれないってことを、平気だと決め付けないで、冷静に考えてみることも訓練として必要ではないでしょうか。恐い目に会ってからでは遅いのです。万が一事故に遭遇しても(起こりそうになっても)、訓練をやっておけば冷静に行動でき、事故の拡大を防げるということも事実です。

 あまりに当たり前のことなのですが、決められたことをきちんと守る、ということをもっとまじめに考えてもいいように思います。先に書いたリーダーの指示を守るということ、潜水水域を守ること(例えば船の航路の関係で危険なこともある)、講習で習った教えを守ること。取るな、立つな、触るな、って自然環境保護のためだけじゃなくて、有毒生物(アワビなんかを取って見つかった場合には、漁師も有毒生物になる)などから自分の身を守るにも大事なことなのです。ちなみにグランドケイマン島ではグローブ、ナイフは禁止でした。もちろん自然環境保護のためですが。

 最後に、ダイビングの場合には「事故=死」を意味しますので、くれぐれも事故を起こさないようにしたいものです。油断大敵。自然を甘く見てはいけません。常に安全に対する感度を高めておくよう努力が必要です。自分も肝に命じるべくここに書いてみました。


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