Current News 29 Oct,2003
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三ヶ月間の「レ・ミゼラブル」の公演を終え、そのまま「砂の戦士たち」の 稽古に入った吉野圭吾さんにお話を伺いました。

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-「レ・ミゼラブル」東京公演を振り返ってのご感想を。
圭吾:そうですね…3ヶ月、7・8・9ってやってきたけど、8月の印象があんまりなくって(笑)。7月、「始まったなあ」と緊張の中やって、9月の終わりぐらいになって「終わるのか?」…って、そんな感じでしたね。9月に入った頃、カーテンコールで最後に泣きそうになっちゃったんだよ。一緒にやってる仲間を見た瞬間、グッときて。「早いんじゃない、まだ」とか言われたけど(笑)。
-長くもあり短くもある3ヶ月でしたね。
圭吾:なんか、レミゼは役者を育てるっていうけど、そうだなっていう気がしますね。 やっぱり、毎回人も違うし、動きもホント違うし、その場で対処してくしかないんですよ。それは…育っちゃうよな。
-「レ・ミゼラブル」で特に難しかったところはどこでしょうか?
圭吾:音程を感情にちゃんと合わせていかなきゃいけない、っていうところが難しい。その音程以上の感情が出ちゃってダーってなっちゃうと「それは違う」って言われちゃうし、「ここまで盛り上がりたいんだけどな」って思ったのに、盛り上がらずに終わるわけにもいかないし(笑)。 ホントは、もし台詞だったらもう叫びたいような部分なのに、でもそこは叫ばない音程だったり、低い音程だったりするんですよ。そしてやっぱり、すごくアンジョルラスって、こう、おんなじ音が多い。ずっとおんなじ音、タタタタタタタ…「市民は来ないー」とかいろんな歌詞が、全部おんなじ音なんですよ。きっとこれを譜面の音程どおり歌えば、役の持っているもの、この役がどうあるべきかっていう役柄が勝手にもう現れてるんだよね。そこの一線を越えてもいけないし、届かなくてもいけないし、みたいな。そこがすごく、難しいところでしたね。「うーっ」ていきたくなるところをクッとこらえて同じ音でずっといる、っていうの、大変(笑)。
-同じ音の中でも表現を変えたりするのでしょうか?
圭吾:そうだね、やっぱり音色っていうものがあるからね。「自分で遊べる部分」っていうのが音色しかないんだよ。わかりやすく言えば楽器の違いですか。おんなじひとつの「ドー」っていう音だったら、ハーモニカの音色と、バイオリンの音色と、三味線(笑)の音色とギターの音色とまあ全然違うじゃないですか。その音色で表現するしかない。 それか、そのひとつの「ド」っていう音でも、ドの#ドの♭、その間のところで、勝負するしかない。それしか許されないから。難しいね。
-それによって印象もかなり変わってきますね。
圭吾:うん。面白いよ。初めてダブルキャストの坂元くんのアンジョルラスを観たときに「こういう表現もできるんだな」って、すごく勉強になった。ホント、面白いほどに違うもんね。「おんなじ歌なのか」みたいな感じ。ちゃんと「歌で表現する」っていう、そういうところがすごく勉強になるよ。
-お芝居のほうも、さまざまな変化がありましたね。
圭吾:そうだね、やっぱり、やっていくうちに変わっていったね。3ヶ月みんなで育てて行けたかなと。自分を含めてそれぞれの個性が出てきて、ここの場面ではここまで必要だとか、そういうところが出てきたと思うんだ。 スタッフ的にも、演出的にも、「今回は今回」っていう気持ちを持っていてくれて、「あなたのアンジョルラスをやりなさい」ていうところが、すごくありがたかった。「あなたのマリウス」「あなたのコンブフェール」そういうところで。ああしましょうこうしましょうみたいな助けをもらうんじゃなくて、相手の変わったことに対してこっちも変わってきたりとか、こっちが変わったことに対して相手が変わったりとか、そういうことが、だんだんできるようになってきて、今度の新しいメンバーで、「レ・ミゼラブル」ができたんではないかと。

-「砂の戦士たち」の稽古の様子はいかがでしょうか。
圭吾:台本読んだだけの時にはちょっとわかりづらかったんだけど、でも1つ1つやってくうちに「ああ面白いな」って思って。ちょっとわくわくしてる感じです。
-「レ・ミゼラブル」公演期間中からの稽古でしたが、大丈夫でしたか。
圭吾:大丈夫ですよ、ぜんぜん(笑)。切り替えはできてる。
-劇団の物語と「砂の戦士たち」の物語の二重構造ということですが。
圭吾:劇団の代表が亡くなって、これから劇団をどうしていこう、みたいなところから話が始まるんですよ。追悼公演で「砂の戦士たち」をやろう、と。 その劇団員としての役名は「井坂」っていうんですね。彼は一応、その劇団の振付師で。役者兼振付師。それで「砂の戦士たち」の中では「ガト」という役をやってます。 そしてその「砂の戦士たち」という芝居をやる劇団側としても、いろいろあるわけですよ。誰々が出れなくなったとか、誰々が怪我をしたとか。 そんなバラバラな劇団が、その「砂の戦士たち」っていう作品を通してやっていくうちに、何かそれぞれまた、新しい思い、仲間への思いとかそういうのが、芽生えてきたりとか…その劇団は最後はどうなるんだ!みたいな。
-楽しみですね。
圭吾:なんせ、やったことがないことが多いので。殺陣とか、カポエィラとかね。そこがどういう風に見せていけるか、ちょっとがんばりどころですね。
-カポエィラは踊りの中に入ってくるのでしょうか?
圭吾:「カポエィラをやります」みたいなことじゃなくて、逃走するときの踊りの中に入ってきたり、戦うときに入ってきたり。
-原作は何年かに渡った物語ですが、お芝居でのガトは何歳なのでしょうか。
圭吾:僕は17歳って考えてるんですけど…これ15歳とかだとちょっと厳しいからね(笑)。 やっぱ17歳ぐらいかなって感じで。
-17際ぐらいの頃、自分自身はどんな人でしたか?
圭吾:17歳、何してただろう。高校生。オートバイ乗ったり…踊りの稽古したり、学校が演劇学校だったんで、卒業公演とかで一所懸命でしたね。「赤毛のアン」やって。すごい純粋。青かったっす(笑)。
「レ・ミゼラブル」千秋楽からまもなく一ヶ月。公開までは遠く感じられた「砂の戦士たち」もあと2週間に迫りました。理想に燃える革命戦士から生きるために盗み続ける街の少年へ、どんな変貌ぶりを見せてくれるか、どうぞご自分の目で確かめてください。
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