書名:井沢式「日本史入門講座」①和とケガレの巻
著者:井沢 元彦
発行所:徳間書店
発行年月日:2006/9/30
ページ:370頁
定価:1500円+税
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は本当は兄弟であるはずであるが、仲が悪い。モーゼの十誡にも「人を殺してはいけない」とある。1人1人が神との契約する教え。そしてそれも唯一の神と。神エホバが唯一の神、そしてユダヤ教では唯一の神を信じるユダヤの人々は救われる。キリスト教ではエホバとともにキリストも神とされる。
これはキリストの歴史の中でいろいろ解釈・議論が行われてきて今では三位一体(エホバ、キリスト、聖霊)が神という解決されたことになっている。またこのキリストを信じる人は全世界のひと。イスラム教ではモハメットは神の声を伝える人、神は唯一エホバ、したがってキリストは神ではないと非難している。そしてこれらの一神教の怖いところは自分が信じない神を信じる人々は殺しても、奪っても良い。自分たちの信じる神が唯一ということで妥協点は見つからない。これが現代でも生きている。
キリスト教とイスラム教が目立って対立したのは石油資源が見つかってからのこと。そして益々エスカレートしていく。では何処までいけばお互いに歩み寄るのか、徹底して相手を壊滅するまで、そして疲れ果ててやめる。もう少し知恵を働かして妥協するか?キリスト教徒22億人、イスラム教徒12億人、世界の過半数がこの2つの宗教の信者。
さて、日本では「人を殺してはいけない」というのは当たり前の常識になっている。また明治以降の西洋の法律が入ってきたときからでもない。キリスト教の国ではモーゼの十誡で神が言っているからいけないこと。になっているが、日本ではどう解釈すれば良いか?
それは十七条の憲法「和を以て、貴しとなす」が原点、「人を殺したら、和を乱すから、殺してはいけない」
宗教と言葉は明治になって出来た言葉、大抵の日本人は宗教というとキリスト教などを浮かべて、私は「無宗教」と言うが、実は日本にも日本教がある。それは和の精神だったり、ケガレを嫌う思想だったり、そして歴史を考えるとき宗教を抜きにしては誤った歴史観を持ってしまうと言っている。
新古今集の仮名序に紀貫之が「近き世にその名きこえたる人」と僧正遍昭、 在原業平、文屋康秀、喜撰法師、小野小町、大友黒主の6人を上げている。後に六歌仙と呼ばれている。六歌仙はいずれも文徳天皇の後継者争いにおいて、紀氏の血を引く最有力候補だった惟喬親王を支持していた者たち。この6人の中で在原業平、小野小町以外は殆ど和歌が残っていない。また本当に小野小町は絶世の美女だったのか疑問がある。惟喬親王の怨霊を鎮めるために六歌仙に選んだり、美女伝説を作ったのでは?
手軽な歴史エッセーとして読むにも良い本です。視点が新しい。