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吉里吉里人

書名:吉里吉里人
著者:井上 ひさし
発行所:新潮社
発行年月日:1981/8/25
ページ:834頁
定価:1900 円+税

文章での読みは吉里吉里人(きりきりじん)、話し言葉ではちりちりじん。この本は今まで読んだ本の中で一番時間が掛かった本、約1ヶ月近く掛かって漸く読み終えた。途中で何度も投げだそうとした初めての本。東北岩手県の北上川近くの吉里吉里村が独立して吉里吉里国となった日の朝6時からの出来事が延々と上段、下段組が800ページ以上。そして吉里吉里語なる東北弁(ズーズー弁)で書き綴ってある。土地勘のある人は簡単に読めるかもしれないが、私には外国語。

そして要領が悪いこてこてとした書き方で、なかなか理解するのにも骨が折れる。この本を最後まで読んだ人は何人ぐらい居るのだろう。井上ひさしは原稿の締め切りを守らないことでも有名な作家。自分をモデルにしたような三文作家、生活保護受給作家、何を書いても売れない作家が主人公。昔から虐げられてきた東北、我慢に我慢に重ねてここで日本国から独立するという設定。人口4000人の国、吉里吉里国憲法も作り、国際法などを駆使して日本国から独立を勝ち取るための2日を綴っている。

そうして昭和50年代の日本の政治、文化、産業(工業、農業)特に農業の問題、矛盾について問題を提起してそれを吉里吉里国はこんな方法で解決しているという具体例などを列記している。そして世界に最たる医療の殿堂、高度医療の病院、研究所、学校などを整備して世界から医師、研究者を集めそして患者も集める。医療立国を目指すという想定。なんともつまらない話から、ちぇっと着目してみたいところなど飛び飛びに出てくる。ズーズ弁の判る人読んでみてはいかが。

ズーズー弁を直すためにズーズー弁をしべったら首から札を下げて立たされたという話があるが、これは井上ひさしの子供の頃のことか?方言を直すという言い方は良くないですね。でも話しても通じないとなると本人にとっては大変なこと。最近は地方にいっても通じないということは殆どなくなった。それが良いのか悪いのか。吉里吉里国はこのズーズー弁を国語にしている。これも井上ひさしの反骨精神か。随所に反骨精神と思われるところが出てくる。