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風雲海南記 山本周五郎長編小説全集第19巻

書名:風雲海南記 山本周五郎長編小説全集第19巻
著者:山本 周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2014/8/25
ページ:611頁
定価:1800 円+税

この作品は昭和10年代各地の新聞の連載小説として掲載された。「浪人の唄」「浪人時代」「武士道春秋」「無明絵巻」そして最後に「風雲海南記」と題名を変えた作品。山本周五郎の作品としては異色の大衆小説。人生とか一生とか武士道とか肩肘張ったところが殆どない。山手樹一郎の「桃太郎侍」の影響を随分受けているとか。

7歳で浅草の月心寺に預けられ、市井の浪人として成長した乙貝英二郎。自らの出自を知らぬままに西国西条藩、一柳家の本家、分家争いの中に巻き込まれてしまう。お家騒動を題材に幕府の家老争い、西条藩のお取りつぶし、そんな中、浪人乙貝英二郎が活躍する。そして西国の水軍を率いて、マカオ、マニラ、カンボジアへと乗り出していく。娯楽大衆小説です。気楽に読める本。この作品は今まで殆ど刊行されていないので、この全集ではじめてお目に掛かる人もいるのでは。山本周五郎らしからぬ作品。吉川英治作品を感じさせる。大嫌いな吉川英治を意識した作品かも。