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輝天炎上

書名:輝天炎上
著者:海堂 尊
発行所:角川書店
発行年月日:2013/1/31
ページ:397頁
定価:1600円+税

碧翠院桜宮病院の炎上事件から1年。東城大学の医学生・天馬大吉は大学へ戻って今までとは全く違う真面目な学生として学んでいる。ここままだ留年続きで放校となってしまう最後の年に。ゼミの課題として「日本の死因究明制度」を調査することになった。年下の美人で優等生の同級生冷泉深雪と共に取材を続ける制度自体の矛盾に気付く。

碧翠院桜宮病院の跡地にAiセンター(オートプシー・イメージング(Autopsy imaging、Ai)とは、狭義では死亡時画像診断、広義では死亡時画像病理診断のことである)が設置されそのセンター長に愚痴外来の医師田口が任命されることが判った。
時を同じくして碧翠院桜宮病院の炎上事件で全滅したはずの桜宮一族の生き残り(すみれ、小百合)が東城大学病院への復讐に動き出す、天馬のおさな友達、ジャーナリスト別宮葉子(ハコ)などを協力を得てその陰謀を阻止しようと立ち上がる。このシリーズ最終章

本書より
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百人には百の信念があるように、百人いれば百の真実がある。

みんな、医学生の僕には無防備に素顔をさらしてくれた。だから僕は真実を知ることができた。
解剖を行なう人たちは、解剖を主体にせよと言い、不満ばかりを言い募る。唯一の解決策のはずのAiの利点を認知、周知させて正しい処方をしようとしている彦根先生には、有象無象が寄ってたかって、誹謗中傷の矢を浴びせかける。こんな調子では、この国に希望はない。
桜宮一族の生き残りが冥界からさまよい出てきたのは象徴的だ。死者を成仏させ、冥界に収容しなければ、この世界は壊れていく。

──人は必ず死ぬ。死の沈黙に還った時、因果は完成するの。
死の女王は、そう言って僕からひかりを奪った。人生が因果応報の感性で終わるなら、生きている意味などない。そして僕は虚無の世界に囚われた。
そんな僕に、天辺から一条の救いの糸を垂らしてくれたのは、ひかりの女神だった。
──物語には必ず終わりがある。だけどピリオドを打った時、永遠の命を得るの。