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おらんくの池

書名:おらんくの池
著者:山本 一力
発行所:文藝春秋社
発行年月日:2005/11/15
ページ:319頁
定価:1476円+税

“おらんく”とは土佐弁で「おれの家」のこと。よさこい節には「おらんくの池にぁ 潮吹く魚が泳ぎよる」とある。そこからとった題名。土佐高知から上京して40年、21世紀の江戸、深川に暮らす山本家の話をエッセー風にまとめてある。途中から作家になった山本一力、前半生の暮らし、家族のことなど非常にユニークで面白い。方言の中に昭和を感じる。下戸の作者はあまいものには目がない、団塊世代で育った人々はあまいというだけでご馳走と感じる。と。

駄菓子屋さんの話、貧乏で買えなかったものへの郷愁。古き良き時代が江戸深川にも残っている。深川に住みついてから作家になった。それまでやっていた会社が破産、夜逃げ同然に引っ越ししてきたところが深川、そしてそこには富岡八幡宮があった。その富岡八幡宮付近を眺めると江戸時代の人々の暮らしが浮かんできた。それ以外の場所では浮かばなかっただろうと言っている。それまで江戸時代を勉強して文章にしても登場人物、街に嘘が混じる。著者の頭の中に景色が浮かばなかったとか。

よさこい節
1.土佐の高知の はりまや橋で
  坊さんかんざし買うを見た  よさこい よさこい
2.御畳瀬(みませ)見せましょ 浦戸を開けて
  月の名所は桂浜   よさこい よさこい
3.言うたちいかんちゃ おらんくの池にゃ
  潮吹く魚が泳ぎより  よさこい よさこい
4.土佐は良い国 南をうけて
  薩摩おろしがそよそよと よさこい よさこい
5.わしの情人(といち)は 浦戸の沖で
  雨にしょんぼり 濡れて鰹釣る よさこい よさこい
6.よさこい晩にこいと いわんすけれど
  来てみりゃ真実こいじゃない  よさこい よさこい
7.西に竜串 東に室戸
  中の名所が 桂浜 よさこい よさこい
8.思うて叶わにゃ 願かけなされ
  はやる安田の 神の峰  よさこい よさこい 
9.来るか来るかと 待つ夜にゃこずに
  月の種崎 まつばかり よさこい よさこぴ
10.土佐の名物 珊瑚に鯨
   紙に生糸 鰹節 よさこい よさこい