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乱世流転記

書名:乱世流転記
著者:柴田錬三郎
発行所:集英社
発行年月日:1998/4/7
定価:781円+税

 最近は面白い本が無くなった。発売されるのを楽しみに待つような本は。なぜだろう昭和30年代、40年代はもう遠い遠い昔になった。時代小説に司馬遼太郎が出てきた頃から波瀾万丈、荒唐無稽、奇想天外といった野放図なロマンはなくなったのでは。柴田錬太郎あたりが最後の世代かもしれない。わくわくさせるようなチャンバラ小説がなくなってきた。この乱世流転記は戦国初期の時代設定。房総半島を舞台に舞鶴城という架空の城、この城が落城するから物語が始まる。柴練の面白さは登場人物設定。決闘場面のうまさ、敵対者の技、主人公の技。次々とあたらしい技を編み出している。また漢文の素養が深いので単なるチャンバラ小説ではなく、今の世の中の鏡のような効果もある。久々にわくわく一気に読んでしまった。吉川英治の「鳴戸秘帖」などととも面白い。