記事一覧

本に出会う

大阪学

書名:大阪学
著者:大谷 晃一
発行所:経営書院
発行年月日:1994/1/20
ページ:245頁
定価:1165円+税

20年ほど前に発売された本です。当時大阪転勤者には必須の本ということでベストセラーになったとか?昨年著者の大谷晃一氏は90歳で亡くなっていますが、今読んでも新鮮な本です。これは大阪というところを理解する東西比較文化論です。大阪の対岸として東京が比較されています。買い物、言葉、人物、文学、人々の行動パターンなどさまざまな面から研究されています。なぜ大阪人は「オレオレ詐欺に掛からないか?」建前で生きる東京人、本音で生きる大阪人。

江戸時代の大阪に幕府の役人は500人、川普請、橋普請でも商人達が自前で行っていた。幕府には適当に付き合う。役人を信用しない。そんな歴史が300年、明治になったからといったから即政府になびくか?といったらそれはやっぱり300年が必要ではないか?会話には「ぼけとつっこみ」「すきやねん」→「すっきやねん」、不法駐車は何故か減らない。赤信号でもクルマが来なければ渡ってしまう。値切りの文化、けつねうどん談義、たぬきうどんは全国でいろいろな種類がある。東京だったら「分からないことがあったら権威ある大学教授に聞け」でも大阪は「分からないことがあったら、大学教授には聞くな、現場のお客様に聞け」と。

大阪を書きながら東京も鋭く見ている。なかなか面白い本です。

本書より
---------------
地方から大阪へ来た学生の報告では、大阪では比較的に地方の方言を気にしないで話せるという。大阪弁自身が標準語でないのと、大阪人に言葉への気取りがないからである。大阪人は自分の文化に大きな自信を持っている。同時に、本当は文化が多様であることを知っている。東京のように統一したいと考えない。

相手のいうことに、反対という場合がある。東京や東北では、正面切って語気鋭く否定する。白か黒かを決しようとする。そういう人に会うと、大阪人はあきれて相手の顔を見つめる。たとえ明らかに間違ったことをいわれても、大阪人は「分かる、分かる」とまず相手を立てておき、「それもそうやけど」と、それをそっと横に置いて話を次に進める。いつの場合も、大阪人は真実は一つだけだとは思っていない。

大阪の食い倒れとは、味にぜいたくする意味とは少し違う。食べ物で倒産した話を、大阪で聞いたことがない。京都は将来また売れる着物を財産として残す。大阪の食い倒れとは、あすの活動のために、食事にはけちけちしないことを意味している。ただ、安くて栄養があってうまいものを選ぶ。

大阪の生んだ漫才は、それを演じる漫才師自身が阿呆になる。阿呆な事を言うだけではなく、どつかれたり、打ち倒されたりする。見物客は、作った人物の馬鹿さを笑うのではなく、漫才師そのものを阿呆だとして笑うのである。聞き手に優越感を与えて作り出す笑いである。

東京の落語家はまるで違う。高度な芸を披露しているんだという気持ちである。志ん朝や談志のように「おれは偉いんだ」というのが露骨に出ている。大阪では鼻持ちならない。たけし、タモリの笑いはこの東京の笑いの伝統の上に立つ。たけし軍団の笑いは、軍団の中の弱者をいじめることの上に成り立つ。たけしと、きよしやさんまの腰の高さと低さを比べると、それが一目で分かる。

大阪学 大谷晃一 **** 大阪人はなぜ振り込め詐欺に引っかからないのか竹山隆範
http://blog.goo.ne.jp/tetsu814-august/e/59cf380eb45a32dcb0b9ca59a0a21a33
神戸新聞NEXT|社会|「大阪学」の作家、大谷晃一氏死去 90歳
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201405/0006993102.shtml