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安徳天皇漂海記

書名:安徳天皇漂海記
著者:宇月原 晴明
発行所:中央公論新社
発行年月日:2006/2/25
ページ:330頁
定価:1900円+税

本作品は奇怪な物語でどこか京極夏彦にも通じるところがあるような気がする。本作品は「東海漂泊」と「南海流離」の二部から構成されている。一部は高丘親王から数百年後、累代の天皇の中で最も悲壮な最期を遂げたというべき安徳天皇の霊が登場する。舞台は鎌倉時代源実朝の時代。江の島に参拝した実朝は江の島の岩窟で安徳天皇の霊が閉じ込められた翡翠の玉の存在を知る。そしてその霊と心を通わせる。幕府の実権は北条義時、尼将軍政子に握られ、金槐和歌集などにしか自分の存在意義を見いだせないでいる実朝。

そしてその立場はやむ負えないと考えている。そして南宋との貿易から、中国、天竺に渡りたいという夢を抱く、その夢を実現するために、大きな船の建造を始める。しかしその船は由比ガ浜沖に沈んでしまう。そして公暁によって暗殺されてしまう。でも実朝の霊は中国、天竺を目指して九州を目指す。その実朝の話を当時の実朝の従者の回想という形で語られる。
二部はその話を聞いたマルコ・ポーロが元の皇帝クビライの命でその秘密を探るという展開、南宋最後の皇帝・祥興帝と安徳天皇、源実朝の無念が霊となって渦巻く。実朝の和歌とともに、老人の語る昔物語なかなか味のある幻妖華麗な語りです。山本周五郎賞を受賞した作品。