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本に出会う

薄暮

書名:薄暮
著者:篠田 節子
発行所:日本経済新聞社出版社
発行年月日:2005/7/1
ページ:449頁
定価:1800円+税

新潟県の長岡市近くの冬には雪に閉ざされる小さな街が舞台、今は亡きある画家を巡った物語、封印された一枚の絵(薄暮と名付けられた風景画)が女性エッセーイストによってある雑誌に紹介される。美術雑誌を編集しているある中年の編集者がその記事に興味を持つ、そして亡き画家の作品をみるために新潟に出向く。その画家は若い頃東京の美術学校にいっていて、その後地元に帰って高校の美術の先生をやっていた。

そのときの教え子と駆け落ちをして、この待ちにやって来た。地域の有力者がこの画家の後援者になって画家が描く絵を買ってあげて何とか生活が成り立っていた。中央には全く出ていない作品群が見つかった。その作品を集めて美術全集を中年の編集者が本を出す。そんな経緯を事細かに、そして画家と奥さん、地域の人たち、美術館の学芸員、市役所の職員が地域おこしに奔走する姿を描く、ちょっとしつこい感じはするけれどしっかりした作品です。