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日輪の遺産

書名:日輪の遺産
著者:浅田 次郎
発行所:角川書店
発行年月日:2011/6/30
ページ:418頁
定価:1800円+税

太平洋戦争緒戦でフィリピンに侵攻し帝国陸軍がマッカーサーから奪った900億円(時価二百兆円の財宝)山下将軍がマニラで奪取した900億円、その財宝を終戦直前の8月10日~15日の間に極秘裏に隠匿された。軍部の幹部は8月10日にはポツダム宣言受諾を知っていた。敗戦後の日本を考えた幹部はは大規模なインフレ、食糧不足で1000万人が餓死する。本土決戦をやっても1000万人が死ぬと云われた。戦後の復興のための資金として時価二百兆円の財宝を隠匿した。

その50年後、一人の老人が残した手帳に記されていた内容とは?
昭和20年8月10日、帝国陸軍・真柴少佐は阿南陸軍大佐ら上司に呼び出されました。真柴は重大な密命を仰せつかります。から始まる。その命令は真柴少佐と小泉中尉の2人で「時価二百兆円の財宝を陸軍多摩火工場へ隠せ」というもの。

丹羽明人が競馬場で真柴と会ったのは偶然だった。丹羽明人は不動産会社の社長、でも建売住宅を作って全く売れなくて倒産寸前の会社、やむを得ず従業員のボーナスを何とかするために競馬に。丹羽が真柴に教えた馬券が大穴を当てる。ところが丹羽は投票が締め切られて馬券を買うことが出来なかった。そして真柴と呑むことになって2人で飲んでいるうちに真柴は気を失って倒れてしまう。心臓発作だった。真柴は亡くなってしまう。そして残していたものは手帳。

その手帳には本当の事なのか?気が狂っているのか?疑いながら読んでいく、そしてそれが段々本当のことだということが判ってくる。

50年前の話に丹羽明人と海老沢、そして当時の関係者が交差しながら登場してくる。密命を帯びた軍人、終戦時の勤労動員の女生徒たち、教師、財宝に関わり、それを守るために生き、死んでいった人々の姿を描いた物語。全くのフィクションですが、何となく本当のような気をさせる物語です。