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日本と世界はこうなる

書名:日本と世界はこうなる
   日下公人が読む
著者:日下公人
発行所:集英社
発行年月日:2009/12/25
定価:1238 円+税

十八世紀に始まった産業革命以降の250年が、今、終わろうとしている。「知識の力は偉大である」「科学が世界を変える」「人口が増えることは良いことだ」「経済が発展することは良いことだ」人類は永遠に進歩すると思うようになった。それが近代を作ってきた精神だが、その結果が良かったのか、悪かったのか。西欧の近代主義に対する信奉が根強くある。
しかし、近代の行き詰まり現象は随所に出てきている。こんな世の中をどう読むか?今後の日本、世界はどうなるのか?日下公人氏独自の視点からみんなに元気を与える論を唱えている。

 日下公人氏は少し、先を行きすぎるきらいがあるので、5年から10年後に検証してみると氏の言っていることが実感として判ってくる。「道徳のない経済は犯罪である。経済のない道徳は犯罪である」もともと近代化が始まった時代の経済はキリスト教という基盤の中で起こった。したがって道徳は常識だった。でもそれが経済だけが一人歩きして、効率、合理性、儲け、株主優先、早く大きく右肩あがりばかりがもてはやされてきた。強欲ばかりがまかり通る。年収1000万円を超えても、逆に500万円の頃の方が幸せだったと振り返る人も出てきている。経済的豊かさは実はそんなに人を幸せにしてくれるものでは無かった。小欲知足で良いのでは「気楽な暮らしを送り」「欲しいものも無ければ」「余分なものもない」そんなところに幸せがあるのでは?

 この本を読んでいて、二宮尊徳、石田梅岩のことを思い浮かべる。西欧が進めて来た近代に慌てて追いついた明治、大正、昭和の時代の日本。130年ほど道草を食ってきたところもあるのではないか?もう一度、じっくりと日本の民族としての同一性、また2000年以上同じ民族同士の生活に裏打ちされた歴史をかみしめて見ることで未来が見えてくるのではないか?そんな国は世界ではまれな国。日本の良さを見つめ直したら未来が見えてくる。

不景気、デフレ、GDPは中国に抜かれてしまうと心配ばかりせずに、ちょっと視点を変えることでもっともっと明るい未来が見えてくることを教えてくれる。具体策は自分で考えてみようで終わっているところが日下公人の良いところかな?