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夏目漱石と帰源院

書名:夏目漱石と帰源院
著者:鎌倉漱石の会
発行所:鎌倉漱石の会
発行年月日:1962/12/9
ページ:36頁
定価:40円

明治20年代東大の学生や若い学生が鎌倉円覚寺の今北渋川、釈宗演の二老師の下に参禅し、後年社会に名を成した人が少なくない。夏目漱石もその一人である。夏目漱石が28才の時(明治27年10月の末から1月7日)円覚寺の塔頭へ参禅に訪れた。そして後に小説「門」のそのときの見聞が書かれている。この本は夏目漱石と帰源院の関わりについて、昭和37年に鎌倉漱石の会(年一回12月9日漱石の命日・漱石忌)がまとめたものです。

釈宗演老師がアメリカに行くときの原稿を鈴木大拙が英語に翻訳した。それを漱石が推敲して赤で朱書きした。漱石晩年の元に2人の若い僧侶と仲良くなって亡くなるまで文通を続けていた。またその2人が上京してきたときには多大に小遣いを与えて優遇したことなど。仏教に惹かれていった漱石の足跡を垣間見ることが出来る。短編の本ですが中味の濃い内容です。帰源院は公開されていない塔頭ですが、門を入って右側へ、急な坂道を登ったところ(梵鐘の下)にあります。門に「夏目漱石と帰源院」のコピーが貼ってあります。

佛性は白き桔梗にこそあらめ
山寺の湯ざめを悔る今朝の秋
其許は案山子に似たる和尚かな