書名：会社のITはエンジニアに任せるな！
著者：白川 克
発行所:ダイヤモンド社
発行年月日：2015/12/3
ページ：256頁
定価：1600円+税
この本はITエンジニアじゃない普通の人、IT嫌いの経営幹部、ビジネスパーソン向けの本です。なるべく、よく分からないIT用語などを使わずに普通の人にも判るように書いてある本です。人物金情報の経営資源を使う現場いる人達に、ITの重要性は判る、またITなくしてこれからの経営は成り立たないことは判っている。でも得体の知れないものITの本質をどう捕まえるか？そしてその本質が判らないと経営者、幹部として役に立たない。そんな人達を対象とした本です。
経営の中で経営幹部、社長にはその本質を知って欲しい。IT部門の切実な願いも込められています。比較的全社で共通的に理解出来ることは実はお金、予算がいくらという感覚。海のものとも山の物ともつかぬIT投資、またいつ出来るの？予算は？よく分からないからIT部門に丸投げ、予算の増大。今までの箱物、機械、設備とは全く違ったよく分からないものとしてITプロジェクトを動かそうとしている。
そんな会社に必要なポリシー、何のためのITなのか？目標の明確化、そして誰にでも見える形にする工夫。セクションの方言で会話している。その方言を翻訳するプロジェクトリーダーの大切さ、そして育成。セクション間のコミュニケーションが大切。そしてITプロジェクトは外部の会社に丸投げではいけない。社内にプロジェクトリーダーを育成するシステムを持って置く必要の重要性を説いている。
会社のITはエンジニアに任せるな！とは逆説的に、エンジニアを有効に活用するには経営陣、実業務部門もそのITの本質は掴んでいて、エンジニアが十分動けるようにしなさい。と。
昔やっていた開発プロジェクトなどを思い出しながら今も昔も同じようなことを繰り返している感じがした。1970代には大きなプロジェクトが目白押し、そして何の経験もない人達が試行錯誤しながらシステム開発を行ってきた。基本設計はその時代のもの、その後その改良、増設、メンテナンスの業務が主になっている今、1から作り直すことが出来ない社内のITエンジニア、団塊世代が引退して小さな改良も長時間かけないと直すことが出来ない。（今どうなっているか調べるのに時間が掛かる）直しても評価、試験に長時間かかる。
この本の中で、20年毎の伊勢神宮の遷宮のように巨大なシステムを20年ごとに作り直して、ITエンジニアを育成するシステムが必要という。全く同感。巨大なシステムはある限られた人々によって開発されたが、その概念設計、基本設計などは残っていない。現用のシステムを解析して初めて判るというようなものも多々あると思う。（開発を進める人達の特徴として前にどんどん作っていくことは得意、でも何故、どうやってというまとめ、記録をとるのは苦手）
したがって20年毎に概念設計からもう一度、行うのは重要なことだと思う。技術が進んでもポリシーなどはそう変わっていない。ポリシーが判ると次工程の仕事が簡単になる。
筋の良いプロジェクトは成功する。筋の悪いプロジェクトはいつまで経っても収拾がつかない。筋が良いというのは巨大プロジェクトであっても筋道が見える。見やすい。シンプル。あれもこれもと欲張っていない。プロジェクト。筋の悪いプロジェクトはその逆。
ITの現場のいろいろな問題、その解決策等を判りやすく説明してある本です。一般化して社会の中の動きに当てはめて考えてみても応用が利くように思う。巨大で複雑系のシステム。でもそれをどうやって見える化するか？そしていろいろな立場の人が共通的な認識が出来る。そんな仕組みを模索している。
著者はあるITコンサルティング会社に籍を置く、この本のような本を書いていたら自分の仕事がなくなるかもしれない。しかしIT部門だけがITシステムの責任を持つのではない。特に社長、経営幹部、実業務部門の人達に本質を理解して欲しいという願いも込められているように思う。
昔、入社時先輩にお前の仕事は今やってる仕事をなくすこと。この開発部門をなくすこと。と言われた。その意味が今頃になって判って来たような気がする。なくそうとするとすればするほど次々やるべき事が出てきた。そして後進に伝え、後進を育成しながら次の世代に交代していく。そんな会社、組織が理想かもしれない。
｢会社のITはエンジニアに任せるな！｣特設サイト
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プロジェクトマジック：オルタナティブ・ブログ
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【書評】会社のITはエンジニアに任せるな！
http://gothedistance.hatenadiary.jp/entry/2015/12/21/110000