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浦賀奉行所

書名:浦賀奉行所
著者:西川 武臣
発行所:有隣堂
発行年月日:2015/3/3
ページ:230頁
定価:1000円+税

横浜というとペリー来航で日米和親条約締結後のことは比較的知られているが、一九世紀に入り相次ぐ外国船来航に東京湾の入口に置かれた浦賀奉行所が防衛の最前線基地として活躍していたことはあまり知られていない。勿論「出女、入り鉄砲」も主要な業務であった。また外交交渉の窓口ともなった。その浦賀奉行所のことをまとめた資料は多くありますが、この本は浦賀奉行延べ51人、与力、同心の人々を取り上げてその事件との関わりなども新資料をもとに述べている。

特にペリー艦隊の来航と日米和親条約の締結に際しては、奉行をはじめ配下の役人が大きな役割を果たした。面白いのは与力が最高責任者を語ってペリーと交渉したり、駆け引きをいろいろやる場面などなかなか面白い。一方、実際に西洋式軍艦を目にしていた与力、同心などは相手の実力を知っていて、海防の重要性、武器の重要性を熟知していて幕府の対応が弱いことが判っていた。従って洋式軍艦の製造を幕府に建言し、その建造を担う。それが横須賀製鉄所(造船所)へ繋がる。

幕末の国防・外交・西洋技術の導入(日本初の海軍創設、戊辰戦争に参加、維新後政府の役人として)に大きな役割を果たした浦賀奉行所の歴史を、浦賀を舞台にして活躍した人々を通して紹介する。
この本は浦賀奉行所というよりそこを舞台にして活動していた人々の事跡をいろいろ述べている。

横須賀に何故海軍工廠があったのか?エンタープライズ、レナルド・レーガンが何故横須賀に寄港するのか?歴史のヒントが隠れているように思う。幕末の日本、尊皇攘夷、皇室を敬うなどよりは差し迫った問題、海防が最重要事項だったそれを担った幕末の幕臣達にスポットをあてた視点で書かれている。