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鯨分限

書名:鯨分限
著者:伊東 潤
発行所:光文社
発行年月日:2015/9/20
ページ:394頁
定価:1700円+税

紀州太地の捕鯨集団「太地鯨組」棟梁太地覚吾をモデルに明治になって段々斜陽になっていく鯨漁の様子を描いている。この小説は明治11年に起きた未曾有の海難事故「大背美流れ」を描きながら章を替えて棟梁太地覚吾の一族の歴史と覚吾の子ども時代からの物語が2段仕立てで進行していく。

江戸時代幕末になると諸外国の捕鯨が盛んになってきて、紀州太地にも鯨がやってこなくなる。どんどん斜陽になっていく鯨漁とそれらに関わる捕鯨集団の人々の生活、激変する国の有り様が彼を襲う、全国を駆け巡り生きる道をみつけようとするが、未曽有の海難事故が「太地鯨組」を壊滅させる。そんな過程がダイナミックに描かれている。今、残る古式の鯨漁(追い込み漁)はこんな経験を経てたどり着いた太地の生きる道だった。

舞台は太地から新宮、大坂、江戸、蝦夷地と覚吾の成長と歩調を合わせるように広がっていく。黒船の来航、大地震と津波、海外の捕鯨船による乱獲、アイヌを蹂躙するロシア、そして幕末の動乱と第二次長州征討への参戦など、次々と困難が襲いかかる。でも棟梁太地覚吾はどんな苦境にも逃げない。負けることは判っていながら戦い抜いた男の浪漫がここにはある。

捕鯨の是非に揺れる現代にこそ読むべき、捕鯨に生きる人々の物語
http://www.nishinippon.co.jp/nlp/reading_guide/article/198320
【書評】書評家・東えりかが読む『鯨分限』伊東潤著 クジラと戦った強い男たちの哀愁の物語
http://www.sankei.com/life/news/151220/lif1512200015-n1.html
『鯨分限』 (伊東潤 著)
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/5513