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婦人記者廃業記

書名:婦人記者廃業記
著者:北村 兼子
発行所:大空社
発行年月日:1992/7/11
ページ:264頁
定価:7000円+税

北村兼子という人を知っている人は殆どいないのでは。私もはじめて知りました。この本は昭和3年に発行された本の復刻版です。当時現代の清少納言と言われていた北村兼子。大阪朝日新聞の婦人記者として学生時代を含めて2年半勤めた後、記者を廃業して浪人を始めた時に書いた本です。北村兼子の祖父は漢学者、漢文の素養があって漢詩を愛続した。鋭い社会を風刺する視点がある。文章もユニークで、また面白い。物事の本質を見る目は鋭い。
記事は論鋒鋭く、徹底的な“現場主義者”で、大阪朝日新聞の婦人記者時代、夜の世界に飛び込んで取材しているカフェの女給などのも扮しそこで働く女性の心理にも踏み込んでいる。この人は残念ながら27歳で亡くなっている。でも残している著作には凄いことが書いてある。もっと長生きしていれば歴史の表舞台に登場する人だっただろうと思う。旧仮名遣い書かれている本ですが、なかなか読み応えのある本です。

例えば“家庭節約奨励政策”について
“ただ女性の勤勉・節約が崇拝されるだけなら、これは謀殺にほかなりません。人類の生活そのものが浪費です。浪費を取り除いたら、人類はもう終りです!浪費する場所があるからこそ、実入りがあり、利益も上がるのです。家庭の収入が増えなければ、家庭の出費を減らすしかありません。それは男の恥です。このような恥を恥と思わず、逆に妻に生活の出費を節約するよう強制することは、厚顔無知というものです”

”廃娼運動,禁酒禁煙運動”について
“私は遊び人は好きではないが、廃娼には賛成できない。なぜかというと悪がにくいからといって禁止するというなら、それでは、あなたに口臭があるからといって、あなたの呼吸を停めろというのと同じ理屈ではないだろうか?”と批判し、“人間の本能は、教育を通して 矯正 できるものではない。娼妓というものは「誤った制度の罪」”だと論じ、女性の政治への参加と立法権を獲得し、根本的に女性差別の制度を撤廃してこそ、男女の不平等をなくすことができると述べている。