書名:日御子(ひみこ)
著者:帚木 蓬生
発行所:講談社
発行年月日:2012/6/1
ページ:540頁
定価:1800円+税
約二〇〇〇年前の日本(倭国)を舞台にした古代ロマンです。奴国(那国)、伊都国、弥摩大国(邪馬台国)の歴史を使譯(しえき)という倭国においては通訳をする一族が主人公、使譯という役職を世襲で累代に継いでいく“あずみ”という一族がいたという想定で、あずみの一族は遠い昔西の方から倭国に渡ってきた人々の子孫であり、数多くあった倭国のあちこちの国に住み着いてそれぞれの国の使譯の役についていました。
このあずみの一族には「人を裏切らない。人を恨まず戦いを挑まない。良い習慣が才能を超える。」という3つの教えがあった。子孫の人々は使譯を果たすために子供の頃から漢、韓の言葉を必死に覚え、数十年に一回程度に行われていた漢の国と交易・朝貢、比較的頻繁に行われた韓の国との交易の時使譯をつとめていた。
この本には建武中元2年(紀元57年)、永初元年(107年)、景初2年(238年)の朝貢の様子が書かれている。それぞれの時代に奴国(那国)の使譯、伊都国の使譯、弥摩大国(邪馬台国)の使譯が主人公となって一族の歴史が流れる。そしてそこには大陸の漢、魏(三国志の時代)、辰韓、弁韓、馬韓(朝鮮半島)東アジアの動乱期に倭国の国々が必死に生き残る道を探る道程が書かれている。後の遣唐使の時代になっても中国大陸に行くには大変な時代。この物語の時代ではもっともっと大変な時代。その様子を克明に力強く書かれている。
どちらかというと邪馬台国九州説の視点で書かれている。柳川市あたりを想定しているようです。その後弥摩大国(邪馬台国)に取って代わるであろう求奈国(狗奴国)、高千穂国などが東方に進出することを暗示するような形で物語は終わっている。その後の神武の東征に繋がるストーリーが見えてくるような展開です。(卑弥呼も日御子とも)ひとつのロマンを感じる物語です。