書名:闇の中の黄金
著者:半村良
発行所:角川春樹事務所
発行年月日:1998/3/18
定価:686 円+税
嘘をつくことを目的にした小説の代表格が「嘘部シリーズ」3部作「闇の中の系図」「闇の中の哄笑」、それにこの「闇の中の黄金」だ。1976年の小説。当時邪馬台国論争が盛んな時代。それも邪馬台国九州説がやや有利かと思われた時代。この小説は邪馬台国とマルコポーロ倶楽部の黄金を結ぶ意外な結末が。国東半島の宇佐八幡宮近くを邪馬台国と比定して話を進めている。現在でもまったく古さを感じさせない語り部の嘘に遊んでみる思いがする。最近では箸墓古墳近くの奈良県桜井市の纒向(まきむく)遺跡が邪馬台国の有力候補とされている。そんなロマンを持ちながらこの本を楽しんでみた。邪馬台国は永遠のロマンが良いのかもしれない。こんな面白い小説も楽しめるのだから。
半村良はSFやミステリ、伝記ロマン、人情噺、時代小説といった素材を使い慣れたシェーカーに混入し、見事な手さばきでシェイクしてみせる。その出来上がった色鮮やかなカクテルは、どれもオリジナリティに溢れ、しかも口あたりが抜群、美味とくるのだから堪らない。さすがに元バーテンダーだと納得させられる。
虚構と虚言
小説の虚構は許されるが、虚言ははばからねばならない。と著者は語っている。