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湖笛

書名:湖笛
著者:水上  勉
発行所:角川文庫
発行年月日:1968/11/20
ページ:754頁
定価:

「湖笛」は昭和38年から39年にかけて毎日新聞に連載された長編歴史小説です。(その後加筆訂正して文庫本にした)作品は知っていたが初めて読みました。

京極高次は佐々木源氏の流れをくむ近江では名門の出身。しかし父の代で没落、家来筋である浅井氏の庇護の元に育つ、信長に仕え、明智光秀の本能寺の変では明智方に、また賤ヶ岳の戦いでは柴田勝家方に味方し、秀吉には京極龍子(秀吉の妾)の働きに寄って秀吉に仕える。秀吉の死後、関ヶ原の戦いでは途中から東軍に、三千の兵で大津城に籠城して西軍1万、一説には3万七千とも言われている。の有力武将(立花宗茂など)を足止めして関ヶ原に行かせなかった。関ヶ原の戦いが始まる3日前まで持ちこたえたが、大津城を脱出して高野山に籠もる。関ヶ原の戦いが終わり、徳川家康から若狭の国、高島郡などを賜る。一つ判断を誤れば一族郎党の絶滅という時代に勝ち馬ばかりに与していたのではなく、負け馬にも乗って、しぶとく戦国の世を生き抜いて近江の名家再興を果たした男。重要な場面にはお寺、高僧が出てくる。高次の苦悩に、一筋、光を与えてくれたのは、仙岳禅師の言葉であった。「迷いに迷うて歩くのが生きるということじゃ」

京極高次は浅井三姉妹の次女初の夫で。京極龍子(秀吉の妾)の兄でもあり、母は浅井長政の妹にあたる。妹龍子の夫、若狭武田の元明が光秀謀反の罪を着せられ(実際は無実)秀吉に詰腹を切らされるところから物語は始まる。武田元明の妻龍子は秀吉の元に連れ去れ、2人の男の子は家来が連れて逃げる。嫡男武若が1人の主人公、そして京極高次がもう一人の主人公、でもその奥に隠れて鳰海(におのうみ)琵琶湖が本当の主人公と思える。激動の戦国時代も鳰海からすれば一つの流れの中の出来事。そんな雄大さを感じさせる物語です。

若狭の人(水上勉の出身地)から見ると遠く山を登って奥に行くと山上に琵琶湖があるという感覚は琵琶湖の見方を考えさせられる。坂本、大津、八幡あたりから扇を開いた感じで見ていた視点とは違った見方です。この物語は琵琶湖を中心として近江を描いている。

主家、忠義ということが重要視されたのはもう少し後の江戸時代以降、戦国時代は生きること、生き残ることが第一優先。その後の人は京極高次を蛍大名と軽蔑して、人気のない人ですが、この作品はもう一つの戦国の生き方を示して、京極高次という人を再評価している。


国立国会図書館デジタルコレクション - 若狭遠敷郡誌
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/965807

香川県立図書館デジタルライブラリー | その他讃岐(香川)の歴史 | 古文書 | 西讃府志 9
http://kagawa.digilib.jp/sonota/komonjo/detail/DK02590.html