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黒い巨塔 最高裁判所

書名:黒い巨塔 最高裁判所
著者:瀬木 比呂志
発行所:講談社
発行年月日:2016/10/27
ページ:390頁
定価:1,600 円+税

元エリート裁判官が司法権力の内幕を暴露した小説です。ノンフィクションではないけれど実際にあってもおかしくないと思える内容です。
三権分立として司法権力は他の権力からは独立しているはずと言われてるし、みんな思っていることになっている。しかし他の権力からの横やりが入っていると思われる実例が散見される。

この物語の中では最高裁の司法行政部門である事務総局の一局、民事局で局付判事補を務めることになった笹原駿が主人公。事務総局が、人事権を含むその絶大な権力を背景に、日本の裁判官たちをほしいままにコントロールしていることを知る

超エリートである須田最高裁判所長官は、意に沿わない判決を下す裁判官を次々左遷して、最高裁判決を思うがままに操る。そんな中で笹原駿は友人の裁判官の「原発稼働差止め」を通じて、須田を頂点とする民事系裁判官支配を覆そうともくろむ勢力争いに巻き込まれていく。

原発の安全性に疑問を持つ笹原ら民事局若手局付たちの対立も、先鋭化していく。笹原たちは、須田や上司たちの圧力と戦うことができるのだろうか?

元裁判官が書いたと言うこともあってちょっと難しい言葉が続くので読みにくい部分もあるが、下の裁判所では「原発稼働差止め」判決が出ても上に行くと裁判官を変えて覆してしまうという現在の裁判例と比較しながら読んでいくとどんな力が働いていくのかということが判る。特に人事権が裁判の行方を左右するという不思議(当たり前か)。法治国家で唯一の基準は法であるべきのに,出世(権力)やお金に価値を見いだす裁判官ばかりか?

なかなか面白い権力小説です。

最高裁判所という「黒い巨塔」〜元エリート裁判官が明かす闇の実態(瀬木 比呂志)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49800
『黒い巨塔 最高裁判所』(瀬木比呂志)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062203524