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東京新大橋雨中図

書名:東京新大橋雨中図
著者:杉本 彰子
発行所:新人物往来社
発行年月日:1988/11/25
ページ:314頁
定価:1,300 円+税

第百回直木賞受賞の長篇です。この本は江戸から明治初期に活躍した実在の画家小林清親をモデルにした作品です。小林清親は「最後の浮世絵師」と称され「光線画」と呼ばれる独自の世界を切り開いて一世を風靡した人です。
物語は本所御蔵屋敷の御勘定掛(下級の武士)であった小林清親が、幕府最後の仕事として新政府に本所御蔵を引き渡しを行うところから始まります。同時に先祖代々が仕えてきた幕府、御家人としての生活をどうするか?失業者となってしまいました。この時21歳。新天地駿府へいって徳川の家臣達と共に生きるか?江戸に残って別の何かを見つけるか?当初、新天地駿府へ母を連れて行くが、小林清親には向いていない仕事がない。そこでまた江戸に出てくる。多くの御家人と同様、生活苦あえぐ日々を送りながら運命の糸に操られながら維新間際の混乱と激動の時代を生きていく。趣味で自己流で続けていた絵画が、浮世絵の版元大黒屋の目にとまったことで画家としての道が開けていく。
西洋化を急ぐ世の中の流行廃りは急激に訪れてくる。そんな中で浮世絵風の絵画は取り残されていく、写真の絵付けで遠近法を学だり、いろいろな人々との助けを請けながら生きていく、光線画家小林清親の波瀾万丈の半生と江戸から明治に移り変わる庶民の生活を描いている。なかなか面白い作品です。

東京新大橋雨中図(神奈川県立博物館)
http://ch.kanagawa-museum.jp/dm/ukiyoe/rekisi/kouki/d_kouki18.html
静岡県立美術館【主な収蔵品の作家名:小林 清親】
http://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/_archive/collection/item/P_76_721_J.html
小林清親の東京名所図
http://j-art.hix05.com/36kiyochika/kiyo.index.html