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ふたり女房

書名:ふたり女房
   京都鷹ヶ峰御薬園目録
著者:澤田 瞳子
発行所:徳間書店
発行年月日:2013/5/31
ページ:291頁
定価:1,600 円+税

江戸時代小説の舞台は江戸が多いのですが、この作品は京都が舞台。京都鷹ヶ峰にある幕府直轄の薬草園で働く元岡真葛(まくず)が主人公。女薬師(豊富な薬草の知識が豊富)又医者としても何人かの患者を受け持っている。御典医を務める義兄の匡(ただす)とともに薬草園の運営も行っている。

6つの短編集です。どの物語にも真葛が関わっているミステリーです。
第一話「人待ちの冬」は、評判の悪い薬種屋「成田屋」を巡る騒動がテーマ
第二話「春愁悲仏」は、怪しい民間療法の真実に迫る。効験あらたかな観音像の正体と僧。
第三話「為朝さま御宿」は、三條西家の子供の重い疱瘡を切っ掛けに藤林家の先代も関係した意外な事実が。
第四話「ふたり女房」は、男(浪人)は妻を残して江戸に行く。京で待つ妻はいくら待っても帰ってこない夫を信じて待っている。江戸に出た夫は助けた武士に気に入られて、その武士の娘と結婚して婿養子に入り、仕事も得る。あるとき転勤で京都へ行くことに。妻を連れて京都に帰ってくるが。
第五話「初雪の坂」は、御薬園の薬の盗難が起こる、藤林家の名誉を傷つけかねない事件だ。ある少年が浮かび上がったが。
第六話「粥杖打ち」は、宮中でお行われる伝統行事「粥杖打ち」から始まった。小正月十五日、宮城では望粥とも呼ばれる小豆粥を食する。粥杖とはこの粥を炊いた際の杓子で、これで子のいない女性の尻を打てば、男児を産むと言い習わされていた。「粥杖打ち」がきっかけでひとりの女御が妊娠していることが判るが。

澤田瞳子は好きな作家、注目している作家の一人ですが、物語の作りが良い。また過不足なく書かれているのでいらいらしない。そして余計な説明等を省いて簡潔なところも良い。