書名:史疑徳川家康事跡
著者:村岡 素一郎
発行所:民友社
発行年月日:明治35年4月18日
ページ:182頁
定価:弐拾五銭
明治の世に前の徳川幕府の神祖家康の出自の隠された秘密を白日の下にし、克明な跡付け貴賤交替史観によって明治藩閥政府要人のいかがわしさを容赦なき筆致で暴き出した本です。幻想の近代国家日本の暗部を明らかにしている。発行所の民友社は徳富蘇峰が設立した(明治20年)出版社です。
地方官吏であった村岡素一郎が『史疑 徳川家康事蹟』という書籍を出版して家康の影武者説を唱えた。文学博士で元内閣修史編修官・東京帝国大学文科大学教授の重野安繹が、この著書の序文を記している。300部発行されたが、徳川関係者からの強い抗議で絶版となった。近代国家日本の暗部を抉る、四百年に一冊の危険な書と言われている。正当は学者からは無視されている本です。誰でも国立国会図書館デジタルコレクションで読むことが出来ます。
徳川家康は江戸時代を通じて神君とされていたため、その出自を疑う者はいなかった。しかし明治になってタブーを破る人が出てきた。
徳川家康の影武者説で一番若い時代。桶狭間の戦い直後に入れ替わったという説を唱えている。他説には大坂夏の陣で真田幸村に殺された。その後は影武者が勤めたと。
『駿府政事録』の1612年(慶長17年)8月19日の記述である。村岡は以下のように引用している。
徳川家康が幼少の時に銭五貫で売られたことが書かれている。
駿府政事録に云ふ、慶長十七年八月十九日御雑談の内、昔年御幼少之時、有二又右衛門某云者一、錢五貫、奉レ賣二御所一之時、自二九歳一至二十八九歳一迄、御二座駿府一之由、令レ談給、諸人伺候、衆皆聞レ之云々。公が此の自白の述懐に據れば、公は幼少の時、又右衛門なるものに、錢五貫を以って鬻賣せられ、九歳より十八九歳迄、駿府に在住せられしと、此比は人の子女を勾引して賣買したることあり、公も此の災厄に罹られたるなり、陪席の左右侍御輩皆之を聽けり
村岡素一郎著、『史疑 德川家康事蹟』14頁
国立国会図書館デジタルコレクション - 史疑 : 徳川家康事跡
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/992561
村岡素一郎
http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/PERSON/M/muraoka_so.html