書名:佐保姫伝説
著者:阿刀田 高
発行所:文藝春秋
発行年月日:2009/3/15
ページ:309頁
定価:1,600 円+税
歳を重ねた大人の、いつもの日常の裂け目から覗く夢幻、1編30ページほど短編ですが、名文がつづく。著者は飽きさせず次々と読みたくなる名手です。そんな12編の短編集です。
「初詣で」「虹の恐怖」「大きな夢」「佐保姫伝説」「ちょっと変身」「像は鼻が長い」「恨まないのがルール」「海を見に行く」「赤い丸の秘密」「五色の旗」「やきとりと電話機」「カーテンコール」の12編
数年ぶり日枝神社で偶然であった古い親友(元恋人?)、絵馬に何かを祈願を書き込んでいた。自分の今まで使っていた万年筆を私に託して去って行った。「初詣で」
子供の頃にみた桜景色その景色に魂を振るわされた。おぼろげな記憶を頼りに初老の男は同じ場所を探して歩く、そこにはそこは葉桜だった。でもそこには写生をしていた女性(年齢不詳)がいた「佐保姫伝説」エジプトのカイロで出会った不思議な女性を描く「大きな夢」佐渡の荒涼とした自然に触れる中年カップルの「海を見に行く」
人生の半分は、儚い夢と不確かな記憶なのだ。人間は一生かかって実は幼い頃に戻っていくのかもしれない。
視点が新鮮で、わかりやすく読みやすい文体です。
阿刀田高さんインタビュー | BOOK SHORTS
http://bookshorts.jp/atoudatakashi/
本書より(「やきとりと電話機」)
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一番正しいことを決めるのではなく、みんなで決めたことが正しい。それで仕方がない。と納得するシステム・・・確かに民主主義かもしれない。