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天皇の刺客

書名:天皇の刺客
著者:澤田 ふじ子
発行所:徳間書店
発行年月日:2013/4/30
ページ:611頁
定価:2,000 円+税

舞台は江戸後期(維新の70年ほど前)の京都。内憂外患の波が押し寄せる時代。朱子学には「主君には忠・忠義、親には孝行」というのがある。明智光秀の主殺し、秀吉の織田家の乗っ取り、など見てきた徳川家康は主君には忠・忠義を前面に、朱子学を奨励した。そして紀州徳川、尾張徳川は将軍家の後継。万が一天皇家と相争うことがあったら徳川が滅びないように水戸徳川には天皇家につけと。また自身を神に東照宮を作り、徳川家が存続するように考えた。完璧だと思われていたこの朱子学には大きな矛盾があった。

主君とは誰か?将軍家(徳川はそう考えていた)、でも1800年頃から幕府の財政破綻、暮らしも悪くなってくると主君?徳川は覇者(奪い取った)では、王者は1000年以上も続いている天皇家ではと考え始める人たちが出てきた。中国では覇者が政権を取ってもいい。徳があれば。という考え方。でも幕末の日本では徳川は覇者ではないか?
本当の主君は天皇家。尊皇という思想が出てきた。

この物語は1800頃が舞台。幕閣は尊王思想を増長させる『日本書紀』を秘かに焼き尽くす計画を進めていた。刷り師、彫り師、版木などを取り締まって中には版元などをつぶしたり、市中に出回る『日本書紀』を焼いてしまったりしていた。これはお庭者(隠密)が密かに動いていた。しかし草莽の志を抱く植松頼助・猿投十四郎たち一団はそれを阻止すべく、天皇の功績を北前船で刷り物にして湊々で頒布することを始めた。尊王の志士たちと幕府隠密たちとの熾烈な戦いがはじまった。そんな時代の物語

澤田ふじ子の小説は冗長系が多くて、ページ数ばかり多い。直接関係ないことの説明など延々と始めてしまう。それはそれで面白いのですが、何となくすっきりしない。読み終わっても何が言いたかったの?という感じがします。これもその1つです。原稿を手書きではなくパソコンで書くようになってきたのでそんな作家が多くなったのかも?推敲が甘い、書き殴ってそのまま出版という手抜きが感じられる。もう少し練って欲しい感じがする。

天皇の刺客 澤田ふじ子著 今日的テーマ、力強く :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55023080U3A510C1NNK001/