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明智光秀

書名:明智光秀
著者:奥村恒次郞
発行日:明治43年2月26日

明智光秀と云えば「主君殺し」と「母親殺し」で300年、極悪非道の逆賊となっている。著者は江戸時代、明治にいたっても明智光秀を擁護する、弁解する人がいない。そこで明智光秀について何故逆賊となっているのかを調べてその問題を考えてみようと思って書かれた本です。弓削の道鏡、平将門、北条高時、足利尊氏、由井正雪なども主君に謀反を起こしている。また光秀と同時代でも武田信玄の父の追放、信長の弟を殺している。

また足利義輝を殺した松永弾正久秀、豊臣秀吉の主君織田家の一族も滅ぼしている。それらの例を挙げながら、信長・光秀の時代の事実をおいながらそれを考察している。また資料としては「日本外史」「惟任退治記」「老人雑話 江村専斎」「備前老人物語」などから主に引用して「甫庵太閤記」「川角太閤記」「信長公記」「豊内記」などは勝者側資料として参考としてあげている。

逆賊という価値観について、今の時代の道徳、法で見るのではなく、戦国時代の道徳、法、置かれた環境の視点から見るべきと云っている。また戦国時代は日本全体に法があったわけでは無く、それぞれの一国が乱立していた。したがってその間の約束事はあってなきもの。罰則があっても施行されない。(現代でも同様、国々の条約はあっても罰則は出来ない)最近の明智光秀を書いた本はいろいろ話を膨らましてあり、理解しがたいが、この本は判ることは判る、判らないことは判らないと割り切ってかなりスリムに削ることがしてあって、本質がよく見えるように思う。

国立国会図書館デジタルコレクション - 明智光秀
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/780933

本書より
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里村紹芭が信長に扇子を献上する(信長上洛)

二本手に入る 今日のよろこび(信長)
舞ひつるる 千世萬世の扇にて(里村紹芭)

明智身秀が愛宕山行った歌会
時は今 天下知る 五月かな (光秀)
水上まさる 庭のまつ山 (西坊)
花落ちる 流れの末を 関とめて (紹芭)

備中高松城の戦いに和睦して引き上げるときに歌った。
西川のひとつに成りて落ぬれは
 毛利高松ももくつにそなる 秀吉

明智光秀の言葉
君君たらずとも臣臣たらざるべからず、われは断して不忠の臣たる能わず
心知らぬ人は何とも云わばいへ 身を惜しまじ、名を惜しまじ
仏のうそを方便と云う、武士のうそをば武略と云う、土民百姓はかはいきことなりと

老人雑話 江村専斎
備前老人物語
国立国会図書館デジタルコレクション - 史籍集覧. 第10冊
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1920299