書名:宮本武蔵
著者:司馬 遼太郎
発行所:朝日新聞出版
発行年月日:2011/10/30
ページ:248頁
定価:580 円+税
宮本武蔵というと吉川英治の宮本武蔵のイメージがあって、吉川フィクションが史実だと思ってしまうところがあるが、吉川英治の創造した宮本武蔵ですね。
この本は宮本武蔵の一生を年代と共おいながら、その時々の事件、出来事などを説明、分析しながら真の宮本武蔵に近づこうとした。
何故か?織田信長、豊臣秀吉は兵法者を重視しなかった。剣術家などは相手にしていない。一対一で戦う戦い方は完全に時代遅れになっていた。集団で鉄砲、大砲を使うか?が戦術として登場してきた時代。剣の道を極めるという宮本武蔵は遅れてきた天才と言えるだろう。たまたま徳川家康が剣術家を大事にして柳生、小野などを指南役に召し抱えた。宮本武蔵は強欲までの出世主義で、「直参旗本3000石以上でないと仕官しない」と自分の価値を高く置いていた。そのためいつまでも仕官は出来ない。肥後熊本細川藩に顧問(石高はない。)で一生を終わることになった。
尾張徳川に仕官話が出たとき、尾張徳川の指南役柳生宗家は武蔵の天才をさして、武蔵の剣は彼以外出来る者がいない。後継者が出来ない。指導で武蔵の剣の奥義に達することは出来ない。後年武蔵の後継者は出ていない。幕末にはやった北辰一刀流などは天才でなくても習得できる。天才は一代で終わる。結果的に本人としては寂しく終わるしかないようだ。一時しのぎに英雄、天才は向いているが、恒常的な仕事はできない。武蔵の他の才能、臨済禅と剣術、絵を描く、彫刻を彫るなど一流の才が見られる。どこかの時点で進み方の選択を変えていればまた違った人生が送れたのではないと思える。一生の内30数回の試合で負けたことがなかったと言われているが、負ける試合はしなかったといった方が正しいだろう。「見切る」ということが旨かったと。
宮本武蔵をまた違った見方が出来る本です。