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鳳雛の夢

書名:鳳雛の夢
著者:上田 秀人
発行所:光文社
発行年月日:2014/11/20
ページ:517頁
定価:1,900 円+税

伊達政宗という武将は戦国時代を舞台にはいつも登場するが、メジャーではなくマイナーな存在ですね。この作品は梵天丸と称した幼少時代から、三代将軍の徳川家光から父と慕われ、生涯を閉じるまでが描かれています。

政宗は父伊達輝宗と母(最上義光の妹義姫)の長男として米沢で生まれる。このとき周りの有力な武将は大崎氏、最上氏、蘆名氏、相馬氏がいた。そしてそれぞれ何代かに渡って婚姻関係で親戚同士。でも各氏族間で紛争が絶えなかった。また同じ氏族でも親子での争い。国人衆を巻き込んだ紛争が常態だった。応仁の乱と同じで大義名分のない。不毛の戦いを積み重ねていた。したがって家康によって徳川幕府が治めることになって、誰が得をしたのか判らない。奥州だった。政宗は知っていてもその部下、その敵対している武将などは殆ど知らなかったがこの本を読むと奥州の全体像が見えてくる。

この物語は政宗は部下と片倉小十郎(親友のように、時に兄のように、支え続けた)二人で「奥州制覇」の夢を追いかけた一生を描いている。父を人質に取られた屈辱の戦で父を助けられなかった。実母と実弟に毒を盛られた。その弟に死を命じざるを得なかった。

奥州という京、大坂からは離れていたことで中央のどさくさに巻き込まれるのが遅かった。ということもあるが、大義名分として神輿(室町幕府将軍、天皇)がない最果ての国では実力伯仲の氏族が終わりなき戦いをやらざるを得ないところがあったのか?奥州を一枚岩にして上杉、佐竹、蘆名と共同歩調をとれれば家康の上杉攻めで家康を一気に滅ぼすことも出来たのでは。でも実際は伊達政宗が出て行こうとすると隙を狙っている者ばかり。戦国時代といえ紛争が絶えない奥州の様子が見えてくる。