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雨物語

書名:雨物語
著者:半村良
発行所:講談社
発行年月日:1993/6/15
定価:520 円+税

本名は清野平太郎、半村良のこと。新宿歌舞伎町の喧騒をやり過ごした一隅に、その酒場(雨女=うめ)はある。四十代半ばのママがいる。そこを舞台に、そこに集う客達の様々な人生模様を描いた酒場小説です。
サービスもほどほどに、客同士が会話を楽しんでいる。人生論あり、芸術論あり、時事問題ありと終わりを知らないやり取りの中に世間と人生がちらり、ちらりと覗かせている。

 半村良は板前、バーテン、コックにマネジャーずっと水商売でくらして、水商売から足を洗ったつもりで入った広告業。これもまた水商売みたいなもの、そして今は小説書いて暮らしているがこれも水商売だ。と言っている。そんなところが良い。小説とか文学というと人生の真実を探るとか、人間の理想を追い求めるとかそんな風に考えられるかもしれませんが、半村良にとっては小説とはいかに上手に嘘をつくかという点に尽きると言い切っている。豊富な自分の経験をシェークして見事なカクテルを作ってくれる。何気ない酒場風景、奥深い人生模様が見えてくる。粋がっているわけでもなく、何気なく当たり前のように料理する手法は見事というほかない。昭和の終わりから平成の初めの頃の話

本書より
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「客たちの青春の夜が更けて、<雨女>で会うだけの飲み友達が記憶のアルバムに焼きついて、学生が、安サラリーマンが、文学青年が、それぞれの人生で分に応じた這い上がりかたをして大人になって、皆憧れた高い酒を当たり前のように飲むようになっても、酔えばつい懐かしくなって足を向けるのが<雨女>なのだ」