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孤闘 立花宗茂

書名:孤闘 立花宗茂
著者:上田 秀人
発行所:中央公論新社
発行年月日:2009/5/10
ページ:356頁
定価:1,800 円+税

山本兼一の著書「まりしてん 誾千代姫」葉室麟の著書「無双の花」という作品がある。この物語にも誾千代姫と主人公の立花宗茂が出てくる。戦国武将立花宗茂の生涯を描いた歴史時代小説

「孤闘 立花宗茂」の帯には
武勇に誉れ高く、乱世に義を貫いた最後の戦国武将の風雲録。大友家臣として島津と戦い、秀吉下での朝鮮従軍、さらに家康との対決!関ヶ原で西軍に与し改易となるも、旧領柳川に所領を安堵された稀代の猛将の奮闘と懊悩を精緻に描く。単行本第一作にして第十六回中山義秀文学賞を受賞。待望の文庫化。

立花宗茂は「義を貫いた」人でもある。旧主大友義統が従五位下なので、豊臣秀吉から従四位(宮中に参内出来る資格)の官位を与えるという申し出を辞退した。戦国の世を生きた武将にあって、一度没落してまた返り咲いた希有な人物。この小説では誾千代姫を持ち上げて、立花宗茂が悪いように書かれている。「義の人」という今までの評判に反抗するように立花宗茂を批判的に描いている。


ちなみに「無双の花」の感想他
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書名:無双の花
著者:葉室 麟
発行所:文藝春秋
発行年月日:2012/1/15
ページ:261頁
定価:1400円+税

山本兼一の著書「まりしてん 誾千代姫」という作品があるが、この物語にも誾千代姫と主人公の立花宗茂が出てくる。秀吉から「その忠義鎮西一、剛勇また鎮西一」と激賞され、ことのほか気に入られて“九州の一物”と呼ばれた、戦国武将立花宗茂の生涯を描いた歴史時代小説。

物語は関ヶ原の戦い西軍として参加して負けて九州柳川城に帰ってきたところから始まる。絶体絶命のピンチに立った立花宗茂と誾千代姫の2人の夫婦の物語。西軍に味方して、大名から転落、そして徳川家康の直臣になるまでの浪人暮らし、徳川家康に召し抱えられたからの活躍、そして旧領柳川藩への復帰、波瀾万丈の生涯をダイナミックに描いている。そこには武士とは、夫婦とは、人ととは、部下とはいろいろ教えられるところが多い。読み応えのある本です。

本書より
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申し訳ござりませぬ、と言って頭を下げた後、誾千代は言葉を続けた。
「恐れながら太閤様は欲得尽くで大名を操り、天下をお取りになられました。太閤様亡き後、豊臣家が欲によって乱れるのは当然の理でございます。されど、さような乱れと関わらずに立てられるべきものが、立花の義だとわたくしは気づきました」
「立花の義か――」
宗茂は目を閉じた。誾千代に〈立花の義〉を説かれた日のことが脳裏に蘇ってくる。宗茂にとって、これまで生きて来た歳月を思い起こさせる言葉だった。
 
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(前略)宗茂の家臣たちは、
もはや、潮時でござる」
と逸り立ったが、宗茂は戦況をじっと見守り、
「まだ早い」
と許さなかった。家臣たちは色めき立った。
「なにゆえでござる。味方が崩れて退きまするぞ」
「それを待っていたのだ。残兵がおっては足手まといになるし、われらの武功も紛れてしまう」
宗茂がきっぱりと言うと、家臣たちも、なるほど、と顔を見合わせて首肯した。乱戦に際して、宗茂は横合いから攻め込む〈横鑓〉を得意とした。

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「死を覚悟した旗を掲げるのは、それだけ生きたいという思いが強いからこそではありますまいか。武士は常に死に場所を捜しまするが、それがしは生きたいと願うことを恥とは思うておりませぬ」
信繁は宗茂に顔を向けた。
「つまるところ真田の義とは、生き抜くことでござる」
信繁の言葉に込められた気迫の重みに、宗茂は感銘を受けた。
 
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「わたくしは此度の関ヶ原の戦でお前様が負けられてよかったと思うております」
「武家には、負けてよいなどということはないぞ」
宗茂は苦笑いした。
「いえ、これにて太閤様よりいただいた柳川十三万石がきれいに無くなると思うと、胸がすっといたすのです」
誾千代は心から嬉しそうに笑った。

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清正が髭に覆われた口をゆがめてため息をつくと、如水もふっと息を吐いた。
「立花のあのような生き様は苦難がつきまとうであろうが、ひとの心を潤しもする。それが立花の天命かもしれぬな」

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「お前様は西国無双の武将にございます。必ずや返り咲いて、誰にも負けぬ無双の花を咲かせてくださりませ」
言うまでもない。そのために京に上るのだ」
宗茂は立ちあがると、襖越しに、
「そなたを迎えに参る日が必ず来よう。それゆえ、さらばとは言わぬぞ」と告げた。