記事一覧

本に出会う

幕末単身赴任 下級武士の食日記

書名:幕末単身赴任 下級武士の食日記
著者:青木 直己
発行所:筑摩書房
発行年月日:2016/9/10
ページ:282頁
定価:780円+税

11/25と12/3の二回に分けて横浜市歴史博物館で「幕末の下級武士の生活と食」という講演会が開かれた。そのとき著者の青木直己氏より紹介された本です。

万延元年(1860年)紀州和歌山藩の勤番侍・酒井伴四郎28才(妻と子供は和歌山に)が江戸藩邸勤務を命じられて、叔父達とともに和歌山を出て中山道を通って江戸まで出てくる旅の経過から始まり、1年7ヶ月の勤務を終えて、その後もう一度江戸藩邸勤務を命じられて出てきた。その江戸での暮らしを細々と日記に記していた。現在は約半分程が残っている。その内容を詳細に解説している本です。御三家紀州藩の中屋敷の長屋に住まいする。中屋敷は現在の赤坂迎賓館の当たりの広大な敷地の中にあった。(ちなみに上屋敷は紀尾井町)

叔父と共に衣紋方という役職についています。仕事は殿様、上司など着物などの着付け、そして扈従達に教える。また越後屋(三井家)へも教えに行っていた。したがって下級武士とは言え単身の独身?の江戸での生活は意外と豊かで、仕事もそこそこに江戸の町を遊び歩いて色々な者を食している。江戸の定番のグルメ、幕末になっているので異人との接触、横浜への見物、大名行列、登城見物といろいろ積極的に興味をもって出かけている。でも月の内2/3位は3人共同で自炊をしている。これも面白くて昼に米を炊く(順番制)おかずは各自が用意する。魚、味噌、酒なんでもあり。ところが明日の楽しみしておいたあじの干物などを叔父に食べられてしまう。こんな愚痴が漏れてくる。
でも上司でもある叔父には直接言えない悩みが見えてくる。初鰹に歌舞伎役者が3両(38万円位)払ったはなし。事細かに物の値段が出てくるので今と比較することが出来る。そば16文(この16文というのは28そば=16、そば粉の比率がいわれたか?)当時の銭で4文銭があり、それを4枚という切りで値段がついている。お汁粉、善哉なども16文。この時代卵20文=400円位 ちなみに鶏肉、卵を食べるようになったのは比較的新しく、ポルトガル、スペインの南蛮人が来た頃からカステラなど。肉というと鴨肉が主だった。しかしこの物語の時代は幕末、イノシシ、豚、牛肉も食べていた。肉は煮るという食べ方をしていた。豆腐、豚鍋、ドジョウ鍋、鰻、サツマイモ、里芋なども。

また味噌、醤油、みりん、砂糖など。醤油は江戸のはじめ頃は上方からの下りものが主だったけれど幕末頃は野田、銚子の濃い口醤油が殆どとなった。江戸の鰻は泥くさいと言われていたが、調理の仕方とみりん、砂糖の普及で幕末には旨くなった。酒はくだりものに頼ってくだらないものは流行らなかった。技術と水の違いか?

単身赴任の気楽な勤務にしては几帳面に質素倹約を主として長屋生活を送りながら、外食には思い切って大枚をはたく。メリハリのある生活をしている。でも下級武士といいながらやっぱり出張手当、世録も多く楽な暮らしをしている感じがした。また二度目の江戸勤務では日光出張、長州戦争従軍の様子など。紀伊の殿さんは第一次長州戦争にあまり乗るきで無かった。仕方なく安芸に行ったと。
なかなか楽しい本です。現在の宮仕えにも通じるところもあります。誰かが東北の人が京浜に出てくると「出稼ぎ」でも東京もんが地方に行くと「単身赴任」と。どちれも「出稼ぎ」ですね。

「幕末の下級武士の生活と食」
講師:青木直己氏
日程:第一回2017年11月25日(土)、第二回2017年12月2日
時間:14:00~16:00 (受付13:30より)
会場:横浜市歴史博物館 講堂  
   横浜市営地下鉄「センター北駅」徒歩5分
募集人員:170名(応募多数の場合抽選」
参加費:1,000円(2回分)


『万宝料理秘密箱 卵百珍』 | 江戸料理レシピデータセット
http://codh.rois.ac.jp/edo-cooking/tamago-hyakuchin/

『万宝料理秘密箱(まんぼうりょうりひみつばこ)』について
表紙見返しに「一名玉子百珍」とある。花洛(京都)の器土(かわらけ)堂こと器土堂主人著。
オープンデータになっているのは、1795(寛政7)年の刊行の前編5冊。初版は1785(天明5)年の刊行で、本書は補刻本にあたる。

国立国会図書館デジタルコレクション - 守貞謾稿. 巻1,3-16,18-30,後集巻1-4
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2610250
国立国会図書館デジタルコレクション - 守貞謾稿
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2609587?tocOpened=1

守貞謾稿
近世後期の風俗誌。喜多川守貞著。30巻,後篇4巻。絵入。別名《近世風俗志》。刊行されることなく原稿で伝わったが,原稿には〈漫〉ではなく〈謾〉の字が用いられている。

国立国会図書館デジタルコレクション - 武江年表
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1123706
国立国会図書館デジタルコレクション - 武江産物志
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2607291?tocOpened=1

国立国会図書館デジタルコレクション - 江戸自慢三十六興
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1304667?tocOpened=1
国立国会図書館デジタルコレクション - 書画交毫五拾三駅 東京自慢双筆三拾六興
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1304756

国立国会図書館デジタルコレクション - 大武鑑. 巻之1
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1015270