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千両かんばん

書名:千両かんばん
著者:山本 一力
発行所:新潮社
発行年月日:2013/7/20
ページ:329頁
定価:1600円+税

この本は山本一力さんが書いたとは思えないほど酷い出来です。江戸っ子をテーマにして本所・深川を舞台に永代橋、富岡八幡宮の参道周辺で生きる看板職人・武市の意地と奮闘を描いているが、どれも切れがない。中途半端な物語展開で、江戸っ子というにはほど遠い鬱屈した日々を悶々と送る職人武市、赤い色の処理の仕方の秘伝の継承を目前にして親方は逝き、弟弟子祐三は女将さんに気に入られて親方の後をついで飾り行灯造りを堂々と行って立派な仕事が出来るようになっている。それに比べて武市は細々と飾り行灯造りで何となく食べている。

そんなところに門前仲町の乾物問屋大木屋から大きな看板の注文があり、いろいろと工夫を重ねながら完成させて行く様を描いている。そしてそれに登場する人たちは全て善人、悪い人が誰も出てこない。物語にメリハリが出てこない。何が言いたいのかよくわからない時代小説です。山本一力さんの小気味の良い、語り部の口調などが全く感じされない作品。どうしたのだろう?少々心配になってきた。

江戸時代の小説で売れる条件とは
1.武州豊島郡江戸市中が舞台であること
2.捕り物などのミステリー性があること
3.剣豪物であること