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異聞 おくのほそ道

書名:異聞 おくのほそ道
著者:童門 冬二 
発行所:集英社
発行年月日:2005/7/25
ページ:617頁
定価:895円+税

「おくのほそ道」(奥の細道)は芭蕉が崇拝する西行の500回忌にあたる1689年(元禄2年)に、門人の河合曾良を伴って江戸を発ち、奥州、北陸道を巡った旅行記です。全行程約600里(2400キロメートル)、日数約150日間で東北・北陸を巡って、元禄4年(1691年)に江戸に帰った。

そんな「おくのほそ道」を題材に弟子の曾良と2人の旅といわれているが、それを脚色して「おくのほそ道」の目的、曾良の目的、そして同行者2人の目的それぞれが同じ道のりを旅をする仕立てになっている。同行者に水戸光圀の家来助さんのモデル佐々介三郎(1640~1698)が光圀に芭蕉の見張りと1つの使命を得て同行する。また柳沢吉保の命を受けた女忍者すま。河合曾良もまた柳沢吉保の命を受けて芭蕉を見張っているが、女忍者すまは知らない。こんな四人が江戸を発って奥州、北陸道を巡る旅行記を新たな発想で再構築した時代小説です。

多賀城からは格さんが助さんと交代する。助さん安積覚兵衛(あさかくべい)(1656~1737)のこと。須賀川から福島、飯坂温泉の酷い旅路のようす、仙台周辺では芭蕉とは別の俳諧が流行していて支援者が殆どいない待遇が悪い。松島でも著名なところは訪れていない。平泉でもやっぱり少ない。五月雨を集めて涼し最上川→五月雨を集めて早し最上川などのように有名な句も実は試行錯誤して何回か訂正して完成したとのこと。その軌跡も出てきて非常に興味が湧く。この旅は通行手形無しでの旅、庄内藩では次に訪ねる人の名前を曾良、芭蕉とも忘れて関所で答えられず、関を越えられなかったなど面白いトラブルもある。月山、羽黒山に登ったときの案内人の意地悪さなども面白い。

徳川光圀の遠大な計画は常陸(水戸藩)を旧主の佐竹(秋田藩)に返してエゾを水戸藩の領主に、そして金沢前田氏と日本海側諸藩とともに第二の長崎港を作る。そしてオロシャと対立するのではなく通商を開いてコミュニケーションを密にすることで安全保証を得ようとすること。介三郎、安積覚を派遣
ところが柳沢吉保は徳川光圀と金沢藩がつるんで幕府に謀反を起こすのではないかと疑って曾良、すまを派遣する。また芭蕉はどこかの密命を受けて旅をしているのではと疑われている。こんな背景の中、旅路が続く、名所旧跡、そして句の生まれた場所を優雅に案内してくれる。なかなか楽しい本です。600頁を感じさせないおもしろさです。

「おくのほそ道」全文
http://ur0.link/I58e
国立国会図書館デジタルコレクション - 蕪村奥之細道. 上,下巻
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2609238

国立国会図書館デジタルコレクション - おくのほそ道
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/921395
国立国会図書館デジタルコレクション - 奥の細道 : 素竜本
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1175286
曾良旅日記
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/basho/okunohosomichi/soratabinikki/00soratabinikki.htm